生命、躍動する季節
綿毛になったタンポポが軽やかに風に舞い、藤の花が見頃を迎えている現在。
例年より3週間前後遅れつつも田植えに精を出す農家の方々を日々目にするようになってきた。夜、田んぼの周囲はこの時期特有のカエルの大合唱がこだましている。
震災から2ヶ月を過ぎた東北の地は多くの困難を乗り越えつつ、自然の中で暮らす生き物達の躍動する季節を迎えた。改めて生命の“したたかさ”を身近に感じる。
先日、知人の漁労長から金華山沖の底引き網で漁獲したマダラ、ヒラメ、カレイを頂戴した。
わざわざこちらまで届けに来てくれた。「大丈夫だから、安心して食べでけらいんね!」その際、今、東日本に住む人々が心配する海産物への我々、消費者へ配慮した一言が添えられた。
マダラはタラ汁と天ぷら、ヒラメとカレイは煮つけにして頂いた。
一時、三陸産の魚介類が一斉に店頭から消えた。代わりに目にしたのは、九州産のカツオやアジ、瀬戸内海の養殖マダイ・養殖ブリ、愛知県産のアサリ、北海道産の解凍サンマにマガレイ、他にはロシア産の赤魚とホッケの開きぐらいだったか。
最近では青森県産や岩手県産のナメタ(ババガレイ)の切り身やマダラなど東北で水揚げが再開された地場産の魚達が戻ってきている。全国有数のマグロ基地の一つである宮城県塩釜ではビンチョウマグロやカジキが水揚げされるようになった。実にうれしく、そしてありがたいことだ。
岩手県に、かつて大学の同級生だった釣友が何人かいて、そのうちの1人はスーパーの鮮魚コーナーで働いているのだが、「最近は大船渡で水揚げされたタラ(マダラ・スケソウダラ共に)、ドンコ、毛ガニ、キチジ、タコも入ってくるようになったよ」と電話の向こうで喜んでいた。現地では沖合トロールやサッパ船も入港しているとのこと。又、客層の消費行動を見ていると、やはり地元・三陸産のものから売れていくのだという。
みんな、待ってたんですね。この時を。
三陸育ちの人間は小さい頃から日常的に魚を多く食べてきているから、正直、魚がないと困る。肉は肉で好きだけれど「魚がないから、そのぶん肉を多く食べよ」と言われても、なかなかそうはいかないんです。 地域柄、あっさりした身質の魚の方を好む人が多いのでしょう。
宮城県では6月から沿岸漁業の再開とそれに伴い営業再開する釣船組合の船宿(遊漁船)も多いと聞く。
海に生きる人々が、復興への足並みを揃え始めた。
2011年5月21日 | カテゴリー:その他