ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。
NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)評議員

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

North Angler’s 12月号

明日11月8日発売の北海道の釣り雑誌「North Angler’s 12月号」では苫小牧市・勇払マリーナ所属の遊漁船「ボイジャー」船長の安瀬君と共に同地におけるロックフィッシュゲームを披露している。

取材当日、昼過ぎからは強風が吹いて激荒れしたものの、幸い午前中は晴天に恵まれ、朝のうちは風もなく実に快適に取材を進めることが出来た。船長という立場ゆえ、いつもは「釣らせる側」の安瀬君であるが、今回は彼自身、釣る側にシフトしていることも着目すべき点であろう。苫小牧の気鋭の“若船頭”がどんな釣りを魅せてくれるのか―。その腕前もぜひご覧頂きたい。North Angler's(ノースアングラーズ)2011年12月号

一日の流れは誌面で詳しくご確認頂くとして、当日我々が釣った50UPのアイナメは7本。そのうち最大は55cmで、他にも53cmは2本釣れている。アベレージサイズは47~49cm、つまり釣れたアイナメの平均サイズが“50cm弱”ということになる。このサイズがトータル50本近く出ているので二人分の釣果としては十分過ぎると私は思ったが、納竿後、安瀬君の発した「もう少しデカいを獲りたかったですね」の言葉には“この海ならそれも可能なんだ”、という地元の海への誇りと自信を私はしかと感じ取った。

苫小牧は、室蘭と並び、広大な道内においても屈指のアイナメ釣り場として知られている。

アイナメは日本各地に広く分布している魚で北海道~東北のみならず、関東や関西、瀬戸内海方面でも人気のターゲットである。が、“大物の数釣り”が可能な釣り場は、そう多くはない。本州に関して、関東以南であれば40cmが目標であり、東北太平洋側では50cmが大きな壁となるだろう。事実、その昔は私もそうであった。普通に考えれば「50cmのアイナメ」は根魚好きの釣り人にとっては憧れの対象であり、そう簡単にお目にかかれるサイズではないのも確かである。ゆえに人によっては一つの“到達点”ともなるわけだが、北海道にはその到達点でさえアベレージサイズに変わり果ててしまう釣り場が存在しているから、「世の中には上には上があるんだな…」ということを改めて実感させられる。

関東以南のアイナメ好きな人は一度、東北の釣り場を訪れてみるとよい。三陸沿岸の荒磯周りに生息するアイナメの強烈なパワーに「えっ!? これが、アイナメなの!?」と酔いしれるはずだ。サラシ渦巻く、透き通った海面に強靭な剛竿が突き刺さるほど強烈に暴れまわる引きの強さは一度体感すれば病みつきになること必至。

そして東北の人は、ぜひとも北海道に行ってみることをオススメしたい。サケ・マス=トラウトと並んで根魚=ロックフィッシュの聖地と言われるその由縁を果てしないスケールと共に思う存分、感じ取ってほしい。

それほど釣り場環境によっては、ガラリと世界観も変わってしまうものなのだ。

私が北海道を訪れる理由は単純に魚の大小だけでなく、釣れる数が多いゆえ色々な事を試すことが出来るという意味合いが強い。魚数が少ないと、マグレで釣れたのか本当に有効だったのかの判別が難しい場面も少なくない。結果、まずはそれなりの魚を確保することに精一杯になり、いつもと同じ手(あのリグで、あのルアーで、あのカラーなら、この場所では絶対に釣れるという一種の自己暗示のようなもの)を毎回繰り出すことで自分の釣りが知らぬ間にマンネリ化、ワンパターン化していってしまう。そういう釣りを毎度重ねているだけでは、新しい発想はなかなか生まれない。

そういう意味でも、デカい魚が沢山いる場所では、アイナメという一つの魚種を狙うだけでも、これほど多くの釣り方や道具が使えるんだな、ということをフィールドが毎回教えてくれる。東北ではあまり釣れない微妙なリグが北海道では爆発することもある。北海道では定番の釣り方が東北では思いのほか通じないこともある。

そして、魚は居るけど喰わないのは、単に魚のせいではなく自分の現時点の釣りではその魚を相手に出来ていないのだ、と考えれば、釣り人はあの手、この手でどうにかして目の前にいるであろう魚を釣ることに躍起する。そうすることで釣り人は進化し、技術が上達していく。私が思うにどんなジャンルの釣り人でもそうだが、良質な釣り場で“釣れない経験”を多く体験してきた人ほど、卓越した技術を身につけている人が多い気がしてならない。釣れる時と釣れない時の状況判断の差が的確に行なえるからだ。

今回の取材ではテキサスリグ・ジグヘッドリグと並んで驚異的な効果を発揮したのが、スプーンリグである。トラウトルアーとしては旧来からお馴染みのスプーンとオフセットフックを用いたソフトルアーを融合させたこのリグへの魚の反応は凄まじく、フォール中にロッドごと引っ張られるようなバイトが続出。改めて、このリグの有効性が実証された取材となった。

北海道は湾の最奥部までに大量の小魚が岸寄りする状況も多く、それだけに同じアイナメやソイという魚に焦点を当てても日常的に小魚を襲って捕食している個体も少なくない。よって、スイミングアクションを織り交ぜながらのアプローチや、フラッシングを伴うルアーは非常に有効で、“光を放ちながら横方向へ進んでいくルアー”は格好の襲撃対象となりうる。

取材当日は最大魚こそ、ガルプSWダブルウェーブ3”ホワイトグローによる1/2ozテキサスに譲ったものの、それに準じる53cmはスプーンリグ(23gスプーン+ワーム)での“巻き”での釣果となっている。

スプーンとソフトルアーという2つの独立したルアーが一体化することで生まれる、独特のジョイントアクションは艶めかしいほどにクネクネと踊り、周囲の魚の視線を振り向かせることが可能となる。通常のリグの釣りではいま一つの釣況の時こそ、ぜひ試して頂きたい。

North Angler’s 誌は、つり人社の北海道支社が発行している北海道向け雑誌だが、その人気ゆえ年々、本州でも多く見かけるようになっている。道内在住の方は勿論のこと、本州の方も北の大地へと想いを馳せながらご一読頂ければ幸いです。