ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。
NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)評議員

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

ロックフィッシュ地獄Ⅶ

先日11月8日発売の「ノースアングラーズ2011年12月号」に続いて、昨日14日には人気根魚専門誌「ロックフィッシュ地獄Ⅶ」が発売された。

今回のロックフィッシュ地獄の取材地となったのは北海道室蘭市。一方、ノースアングラーズ誌では同じく北海道の苫小牧市で取材が行われているが、道央太平洋側は道内でも有数のアイナメ釣り場として知られている。

荒磯が続く本州・東北は三陸沿岸の出身ということも手伝って、私の場合は各媒体では「磯撃ち」、「テキサス」、「ブチ抜き」といった要素が色濃く反映されていて、これまでは豪快なパワーフィッシングを披露することが多かった。それは磯っぱりでもボートロックでも同じこと。頑強なベイトタックルでヘビーテキサスをブン投げ、50UPアイナメを獲るといった過酷なシチュエーションでの体当たり取材が大半だったものの、今回のロックフィッシュ地獄ではベイトタックルとは相反するスピニングタックルを手に、繊細なライトリグを駆使して大物を狙い仕留めるという描写になっている。

室蘭港をつなぐシンボル・白鳥大橋。典型的なベイエリアの海です。今回は舞台が磯場ではなく、ベイエリアの防波堤であること、そして釣況そのものがスピニングタックルの方が、より適切だったいうこともあり、これまでとはまた違う“手の内”を誌面でご紹介出来たのも斬新で良かったと思う。

 

劇中では新しい釣り方やリグのオンパレードだ。公の場で正式にご紹介するのは初めての言葉も多いから、読者皆さんにとっては余計に目新しく写るかもしれない。

今回誌面中に登場する新しい言葉は下記の3つ。

●シューティンウェイ・スキップラン(SWC-802EXH)を用いることで可能となるヘビータックルで軽めのリグを繊細に扱う「ヘビーライト釣法」。

●シューティンウェイ・スイミントレーサー(SWS-702L)+マーキング付きPEの組み合わせによる「テンション0⇔100釣法」。

●オフセットフックを接続したスプーン+ガルプSWダブルウェーブ3”の組み合わせによるフラッシングを伴う“クネクネ”アクションが艶めかしい「スプーンリグ」。

 足場が良くてメジャーな港湾部は、老若男女誰もが気兼ねなく行けるフィールドであることが魅力だ。

その反面、磯からの釣りはポイントに入るだけでも大変な労力を強いられる。車を停めた場所から、そのままの足取りで楽にポイントに入れる釣り場はそう多くはない。特に三陸のような東北太平洋側ではその傾向が顕著だ。むしろ、わざわざ一ヵ所のポイントに入るために一山を上り下りして、道なき道をひたすら藪こぎしながら、ようやくたどり着いて釣りを開始したのはいいものの、期待とは裏腹にまるで魚っ気がない…。次のポイントに移動しようにも帰りの体力のことを考えると、この先を更に突き進むだけの余力や気力がもう残っていない…。正直な話、過酷である。

釣りというよりは、むしろハイキングを通り越してロッククライミングに近い。磯場では一歩足を踏み外せば、ケガどころでは済まされない局面もあるため、まさにそれ相応の心構えと万が一の事態に備え、完全装備で挑む必要がある。

こういった磯のオカッパリでは体力に自信のある者、そしてある意味、チャレンジャーな者が優勢になりうる。場合によっては釣りをしている時間よりも、山歩きしている時間の方が長いにも関わらず、仮に一発当たれば人知れぬポイントで密かに大物を手に出来る可能性も秘めているため、一度こういった体験をしてしまった人は「夢よ、もう一度」と、今日も磯場へと足繁く通うことだろう。

これは山深い渓流における源流釣りにも同じようなことが言え、まさにエクストリーム・フィッシングの部類と言えよう。

 室蘭市は道内屈指の重化学工業都市として知られています。一方、誰もがアクセスしやすい港湾部は手軽に行ける反面、プレッシャーは恐ろしいほどに高い。磯場は無限とも思えるほど魚の着き場も豊富にあるが、防波堤では元々、魚のいる数にも限りがあり、その限りある資源を釣り人同士がこぞって“取り合い”する形になってしまうゆえ、人的プレッシャーが必然的に高まっていく環境にさらされている。

そこで、「人と同じ道具を使い、人と同じ釣り方をやっていたところで釣果もまんべんなく各自に行き渡るか?」と言えば、残念ながら今の世の中それほど甘くないのが実状である。

正直、誰かが連日訪れているということは、魚の視点で考えれば「常に釣りあげられてしまう脅威にされされている」ため、釣り人に至ってもこういった釣り場はライバルが多いだけに不利になる。必ずしも狙いの魚が自分にまで“いきわたる”とは限らない。

大切なのは限りある魚をどうやって確実に獲るか、数少ないあの大物をどうやって自分に振り向かせるか、だ。

そういった境遇から編み出したのが、この上記3釣法(●)なのである。

これまで「根魚の聖地」と称されていた宮城県牡鹿半島は一時の異常なまでもの根魚人気に伴って聖地から激戦区へと変貌を遂げた。そして、この数年前からは半島全域での釣果が低迷していたことも記憶に新しい。特に防波堤では釣り人の少ない平日の深夜ならまだしも日中、それも週末となれば尋常ではないプレッシャーが掛かり、このような中でコンスタントに釣果をあげ続けることは本当に難しくなってきていた背景がある。

そういった中で人々はプレッシャーを少しでも避けるべく離島を目指したり、隣県の岩手沿岸へ北上するようになっていったわけであるが、普通に考えれば、毎回毎回そうしてばかりもいられないのも確かである。

だからといって、いつも釣り慣れているエリアにある、人が渡れぬあの岩の上まで辿り着くことも無理。でも、足場の制約がある磯場では人が立てる「釣り座」は限られているから、今日も同じ場所に入るものの、入れ代わり立ち替わり誰かが連日入ってくる状況に案の定、今日も釣果は望めない…という現状に一種の危機感を抱いていたのも事実だった。

そこで牡鹿半島で釣りをする際には、記録級の大物に狙いを絞るのではなく、そこそこなサイズを平均的に釣ること=毎回安定した釣果を得るべく「場所(足)で釣る」のではなく、「自分の技術で釣る」方法を私は模索し続けてきた。だから私はあまりランガンはしなくなった。狙い定めた場所であの手この手でじっくりと釣り込んでいくことが近年多くなった。

その過程で見出すことに成功したいくつかの要素を自身の“持ち駒”としていたことが、今回のロックフィッシュ地獄Ⅶのロケで遭遇した状況下で、いかんなく発揮され、あのビッグフィッシュへと辿りつけた。

何を隠そう、震災後、海のオカッパリ、ロックフィッシュのオカッパリをしたのはこの取材日が初めてだった。最後は今年2月の地元・牡鹿半島の漁港でのメバル・ドンコ狙いの夜釣りであったから、その間、私には8ヵ月のブランクがあったものの、ぶっつけ本番の取材ながら結果はしかと付いてきた。

白鳥大橋を渡る車中から。東京・台場のレインボーブリッジや横浜のベイブリッジにも似た雰囲気がありました。人とは違う視点を持ち続ける柔軟性とその戦略の幅(経験による引き出しの多さ)こそが、例え貴方にとってお馴染みのポイントであっても今日から新境地へと変わりうるのである。いつの時代も釣り人は魚を釣ってナンボであり、第一に釣れる釣りを末永くし続けたいですよね。

又、私のように一ヵ所のホームフィールドだけに留まらないタイプの釣り人にとっても、こういう視点で釣りを捉えることで、初めて訪れる釣り場で遭遇する予期せぬ事態や状況へも慌てずに対処出来るスキルが身についていきます。

今回、誌面を通じて読者皆さんに一番お伝えしたかったのは「時代背景に合わせた釣り方を自分で切り開く」という部分です。

取材当日、私が遭遇した状況とその過程で行き着いたパターンをご自身の釣りに重ねることで本誌面をご参照頂きながら、今後の貴方自身の釣りに活かして頂ければ幸いに思います。

一日のゲーム展開は、自分自身で造りあげていくものなのです。