心をつなぐ、北海道からの便り
過日、出先から事務所に戻って来ると北海道から大きな荷物が届いていた。
事務所に荷物が届くのはごく日常的なことであるが、取引先や契約メーカーからの段ボールのみならず、その中に発砲スチロールの荷物も一緒に届いていた。蓋を開けてみればホッケの開き干し(それもオホーツク海産のシマボッケ)、毛ガニ、シシャモ、数の子など北の海の幸がぎっしり詰まっていた。
余談で恐縮ながら北海道産のホッケは私の大好物でもあるから、突然の贈り物に驚いた。送り主は、道内でロックフィッシュゲームを楽しんでいるシューティンウェイご購入のユーザー様で、「これまで様々なロックフィッシュロッドを買って使い倒してきたが、正直なところ自分に合う竿が見当たらずにいたところシューティンウェイに出会いました。早速、日々使い出してみてからというもの自分の理想通りの竿で、まさにこんな竿を待っていました。」と使用感とコメントが添えられていた。文末には「北海道の私達も東北の復興を祈願しております。北海道の幸を食べて、どうか元気を出して下さい」と綴られていた。
弊社製品ユーザーからの心温まる贈り物に一同、大変恐縮しつつもありがたく拝受させて頂きました。送って頂いた方、誠にありがとうございました。大変美味しく頂戴致しました。
その数日後、同じく北海道から私宛に封書が送られてきていた。送り主は、去る10月10日(体育の日)にロックフィッシュ講習会を開催して頂いた札幌市内のプロショップ・ノースキャストの平中社長様で、お手紙と一緒に同店のオリジナルカレンダーが同封されていた。
お手紙には「いまだお客様と佐藤さんの講習会のお話をしております。…(略)来年度はぜひ実釣イベントとアングラーズパーティーの開催を出来ればと切に願っております。」との年末の挨拶と共に大変ありがたいお言葉が綴られていた。
ご多忙にも関わらず、丁寧に、真心のこもった数々のお言葉を頂戴し、私も胸が熱くなると同時に北の方角を向きながら御礼の一報をさせて頂いた。どうもありがとうございました。
ちなみに同封されていたカレンダーは同店のお客さんと一緒に作り上げたものだという。毎月釣りにまつわる写真を募集し、1ヶ月毎にお客さんの釣果写真を入れて作ったとのことで、どの写真も写っている皆さんお一人お一人が生き生きとされており、釣り上げた魚を持っているその表情は明るく、そして何より幸せそうで、1ページ毎に拝見しているこちらも心がほころんでくるものでした。
先程の平中社長様のお手紙の続きには「3月の大震災。同地区(道内)においても釣り自粛モードになり、同月の写真募集は1通もありませんでした。」と書いてあり、「忘れてはいけない教訓として3月のカレンダーには『頑張れ日本!!』『頑張ろう東北』の文字と佐藤さんから頂いたコメントを掲載させて頂きました。」と綴られていた。
私が北海道のフィールドに伺うようになって早6年。今、確かに実感として湧いていることは北海道の方は素直でフレンドリーな方が多く、そして穏やかな人が多いということだ。
私は東北生まれの東北人であるが、それゆえ自分の性格のみならず、東北人ゆえの気質というのもよく分かっている。東北の人は世間一般に言われる通り“粘り続く辛抱強い人が多い”ことは私も昔から誇りに思っているが、なにぶんシャイで恥ずかしがり屋の人も多く、控えめで口数が少なく、人前でうまく自分を表現出来ない人が多いのも東北の人の特徴の一つである。決して自分のことだけではなく、常に周りの人のことを気にかけている(周囲への配慮する心)のだけど、根っからの“恥ずかしがり屋さん”ゆえににそれを表(人前)には表わさない、いや表せないタイプというか、東北の人とはそういう人達でもあるんですね。
だから、私が北海道に講習会に伺った際、道内の皆さんの真剣な目つきや態度姿勢は勿論ですが、自分から私に積極的に話かけてくれる人が多かったのも新鮮に感じる次第であった。同じ北国にあっても北海道の人と東北の人は雰囲気が違うなぁ、と―。
会場にお集まり頂いた皆さんの中には本や映像以外で生身の私を見たのは殆どの方が初めてのことしょう。そして、私を前に緊張していた方もいらっしゃったかもしれません。
でも、質問コーナーの際や講習会終了後も最後まで残って、順番に並んでまで自分の言葉で私に何かを伝えたい、普段自分が抱いている疑問や質問を直接聞いてみたい、という感情が凄く伝わってきて、道内の皆さんの人間性の素直さや積極性を改めて実感すると同時に「あぁ、ここに来て本当に良かったな…」と強く思いました。なにぶんタイトスケジュールでの来道のため、講習会とはいえ限られた時間内での滞在ではあったものの、一緒にいる時間を通じてご参加頂いた皆さん方とお互いに時間を共有出来たことは私にとっても大きな財産です。
これまでこのことはあまり一般向けにお話することはありませんでしたが、私の祖母は北海道旭川の生まれということもあり、その孫である私にも少なからず“道産子の血”が流れている。そういうご縁もあって、私にとって北海道とは見ず知らずの土地ではなく、安心できる地というか、親近感が湧く、懐かしい感じがする土地で行けば行くほどに好きになり、本州に帰る時には毎度のことながら名残惜しい気持ちになる場所でもあります。
だから、あの人気根魚専門誌「ロックフィッシュ地獄」の編集長やら同誌に携わるカメラマン達はそのことを知っているから、ときどき言われるわけです。「佐藤さん、そろそろ北海道に引っ越した方がいいんじゃないの?(笑)」って。
いずれにしても雑誌の誌面で私の北海道記事が続けられているのも道内の皆さんから私の北海道での釣りが見たいというお声が多く寄せられているからこそ、それにお応えさせて頂いている誌面にもなっています。
根魚釣りの本場からお呼びがかかることは本当にありがたいこと。
10月10日に開催された当方の講習会には熱心な道産子アングラー皆様に多数ご参加頂き、幸いにもご好評賜りました。そこで来年はノースキャスト平中社長様からご提案頂いたように、道内の皆様と一緒に楽しく竿を出せる場として、機会に恵まれれば実釣イベントもぜひお受け致したいと考えております。
最後に平中社長様からの手紙にはこう書かれておりました。
「今の私の夢を書かせて頂きます。それは、三陸地方に釣り人が戻ってきた時、弊社のお客様と『三陸釣りツアー』を行なうことです。その時はぜひご協力の程よろしくお願い申し上げます。まだまだ震災後の深刻な状況とは思いますが、来年は東北の皆さんが笑って過ごせる日が一日も早く訪れる事を心よりお祈り致しております。」と―。
この度の東日本大震災で被害に遭われた同じ東北に住まう釣り人の皆さん。
海を越えて北海道の皆さんも私達の東北のことを大変気遣ってくれていますよ。
これまでロックフィッシュシーンの先進地でありながら、相互において全くといってもいいほど交流が図られてこなかった北海道と東北。
そんな日本が世界に誇るロックフィッシュ文化発信2大聖地を結ぶ“橋渡し役”として、被災地・三陸に残った私も、もう一度頑張っていくつもりです。
三陸が限りなく本来の姿に戻ろうとする頃、北海道の人は道内には生息しないベッコウゾイを釣りにぜひ当地にお越し下さい。
もちろん、アイナメやクロソイは道内の皆さんが普段釣ってらっしゃるような特別大きな魚は正直なところ、こちらではそうそう釣れるものではありません。逆に、東北のアイナメって(アベレージサイズが)ずいぶん小さいな~と思われるかもしれません。
でも、この地に来なければ目に出来ない絶景の中で、ここでしか楽しめない釣りがあるのも事実なんです。
それに、復興を成し遂げようと必死に頑張っている東北をもっともっと応援してほしいです。
そして東北の人は、我が国におけるトラウトとロックフィッシュの“最後の楽園”と称される、広大な北の大地の凄さをぜひ一度はご自身で体感してほしいと思います。 東北でロックフィッシュをやっている方であれば、北海道のウサギアイナメやシマゾイは憧れの根魚であり、いつの日にか絶対釣りに行きたい!と思っているはず。
そうであれば行きましょうよ、北海道へ。
釣りましょうよ、憧れの魚を。
今年も北の二大フィールドには大変お世話になりました。
ありがとう北海道。
そして、これからも共に歩もう、東北。
2011年12月29日 | カテゴリー:その他