ノースアングラーズ7月号 実釣取材の舞台裏ストーリー
現在発売されている6月8日(金)リリースのノースアングラーズ2012年7月号(つり人社)では留萌市の沖堤オカッパリロックフィッシュゲームを披露している。
北海道の地名はアイヌ語に漢字を当てたものが大半なため、本州在住の方で、北海道を訪れたことのない方には普段なかなか聞き慣れない地名も多いかと思う。事実、「留萌(るもい)」という場所についても、留萌(るもえ)と読み方を誤認しているケースもあるので、その辺はぜひ注意深く気をつけてみたい。私自身、留萌市を訪れたのは2年振りで、その時は「ロックフィッシュ地獄6」の取材とシューティンウェイ各機種のプロトタイプを持ちこんでのテストをおこなった思い出深い土地の一つである。
2年前。当時、開発途中だったシューティンウェイSWC-802EXH“スキップラン”でプリスポーンの40UPシマゾイを釣り上げたのもこの留萌で、昔からデカいシマゾイをひたすら釣りたくて、「せたな町」から北上しつつ釣り歩き、ようやく辿り着いたこの地で、狙いに狙っていた憧れの魚が闇夜の水面に浮上した際にはハンパなく興奮したのを、まるで昨日のことのように思い出す。
釧路を中心に十勝~根室など道東方面に局地的に多く生息するウサギアイナメと、どちらかというとサイズを狙うなら日本海側が有利となるシマゾイは私にとって日本国内に生息する根魚における最高ランクに位置づけているレアなロックフィッシュ。希少価値で言えばキジハタやベッコウゾイより遥かに上をいっている魚達だ。ちなみにシマゾイは稀に岩手や宮城の沖釣りで釣り上げられるケースもあるが、基本的に寒流色が強い魚種であるため両魚種に関しては通常、本州ではお目にかかれない。だからこそ、北海道に釣りに行く価値がある。どうしても釣りたい魚がいるならば、その魚がいる場所まで自分の意志で赴く。憧れの魚を必死に追いかけ“自分の手に抱く”醍醐味は心を激しく揺さぶる。まさにロマン溢れる、夢の釣り旅なのだ。
さて、話を戻すと本来であれば、今回の取材は積丹半島でのアイナメ取材を予定していたのだが、取材日があいにくの強風によるシケ模様の天候で危険と判断し、取材が延期となってしまった。
積丹半島のアイナメ釣りと言えば舞台が磯が主になるだけにシケの荒波では岩場には立てないから、これでは仕方ない。が、この後にはショップさん主催の実釣セミナー、TVロケ、DVDロケが相次いで迫っていたため時間的猶予はない。元々、私の訪道スケジュールに合わせて企画して頂いている取材だけに入稿〆切まで残り数日、更にはカメラマンさんの都合も今日か明日しかスケジュール確保出来ない状況で、私的にも取材を行なえる時間も予め決められているため「とりあえず、安全に取材出来る場所ならどこでも結構ですよ」と思っていたら、留萌の方が早く風が収まっていく予報とのことで、それならと留萌でのクロソイ狙いに変更して取材を決行した。
まだ残雪が残る中、桜の花が咲いている5月中旬。北国もようやく釣りのハイシーズンに突入し、出版社側もカメラマンも私もそれぞれのスケジュールが満杯なため取材日を仕切り直すことは無理だったため場所を変えて強行した。
でもこれが大正解。世の中って不思議なものですね。
思えば、ロックフィッシュの取材においては過去最高の釣果をマーク。何と言っても“大物の数釣り”を心底堪能出来たから凄い。
先日のブログでもお伝えしているように北海道の日本海側は太平洋側に比べアイナメそのものの生息密度がそう多くはない上にサイズにしても太平洋側ほど大きくならないで成長が止まる魚がほとんど。その分、太くなる。
特に道内では北に行けば行くほどその傾向が顕著で、道北圏に近づけば近づくほど大型のアイナメは期待出来ない。その代り、アイナメに代わって勢力を拡大するのが北方系フサカサゴ属のソイとエゾメバルである。ソイはクロソイが主で時々マゾイ(キツネメバル)とシマゾイ、ムラソイ&オウゴンムラソイ(北海道の地方名で言うハチガラ)が加わる。
そういう観点から見てもソイのルーツは北国にあり、クロソイの本場は北海道であることは容易に想像につく。
ただし、北海道には生息しないベッコウゾイや関東以南にまで勢力を拡大していったムラソイ族だけは、やや温かい水温を好むことからその勢力を本州でより拡大していった種族に違いない。
さて―。留萌に到着すると港で私達を出迎えてくれたのは、いつもお世話になっている正宝丸の齊藤船長。早速、堤防に渡して頂く。沖堤とはいえ、基本的にはあくまでも防波堤なので私の中では、そこが沖に突き出した場所にあるのか、それとも地続きの防波堤なのかの違いくらいでしかないが、私の地元である三陸では連なる磯場が防波堤の役目をしている独特の地形柄、旧来から沖堤自体が少ない海ゆえ、「わざわざ沖堤に乗って防波堤釣りをする」という概念が定着せず、結果的には沖堤での釣り文化は一般的に広く浸透しなかった経緯がある。
なので、三陸エリアでロックフィッシュを楽しんでいるアングラーには沖堤への渡船と言うとなんとなく敷居が高いように感じてしまう方もいらっしゃるかもしれないが、北海道では堤防でのオカッパリをするのに沖堤への渡船はごく普通のこと。それほどメジャーなんです。平日でも仕事帰りのお父さん方が、夕方から沖堤に渡ってちょいと夜釣りするのに17時過ぎ、18時過ぎから乗ってくるほどだ。
よって、人気のある沖堤ともなれば夕方になるとエサ釣り~ルアー釣りに至るまで多くの釣り人でワイワイ、ガヤガヤと賑わいを見せる。
この日は宿泊拠点になっていた余市のホテルまでカメラマンが迎えに来て下さり、それからスタッフ全員で留萌に向かった。ホテルを出たのは夜10時半過ぎだったので留萌に到着したのは午前1時半過ぎ。そこから仮眠して早朝に沖堤に渡船して頂き、夜明けからのデイゲームでクロソイを狙った。
結果は誌面をご覧の通り。
なんと開始2投目からいきなりプリスポーンの45cmオーバー・2kg後半のクロソイがホワイトグローカラーのガルプSWダブルウェーブ3”の3/8ozライトテキサスにヒット。続く3投目には同ルアーで50cmのクロソイがヒットし、一気に眠気がぶっ飛ぶ!!
その後は最大55cm(3.2kg)の極太ランカーを筆頭に50UPのクロソイが8本、45UPが30本、45cm未満は多数につきカウントせず…という驚愕の釣果を叩き出すことに成功した。
タックルは9割方スピニングタックル・シューティンウェイSWS-702Lスイミントレーサーによるもので、ベイトタックルではなくあえてスピニングタックルでラインスラッグを生かして軽やかにフワフワ誘いを掛けたことが圧倒的なバイトを引き出すことに繋がったと思う。
又、ベイトタックルを使うにしてもここではシューティンウェイSWC-802EXHスキップランにPEラインをセットした“PE版”の「ヘビーライト釣法」を駆使し、ヘビータックルながらライトテキサスを軽快に扱うことが可能な同ロッドでのフィネスアプローチこそが数々の大物クロソイのショートバイトを的確にモノに出来た結果となった。
産卵を控えたソイはアイナメ以上に水質や水温にもすごく神経質になるし、人が多いハイプレッシャーの釣り場では、よりライトリグが強みを増してくる。釣り場の状況・魚の活性に合わせて的確にタックルとリグを使いわけたいものだ。
クロソイの他にはアイナメ、ホッケ、エゾメバル(ガヤ)、カジカも混じり、最終的には五目釣り達成。
堤防からのオカッパリでこれだけの釣果が出せるって本当に凄いこと。
ドラグの鳴り方でだいたいの大きさが判別つくが、これだけ50UPのクロソイを連発してしまうと感覚が完全にマヒしてしまい、入れ食いの最中には水面に浮上した45cm前後、重量にして2~2.5kgクラスのクロソイを小型だと錯覚してしまっていたから恐ろしい…。仕舞には45cm前後のソイならライトなスピニングタックルにも関わらず、気がつけば手っ取り早く豪快にブチ抜いてしまっていた……。
取材中に釣ったソイのアベレージサイズは40cmオーバー。45cm~48cmでまぁまぁサイズ。50cmで「おっ、いいサイズ!」、53~55cmで「よっしゃー!」という、とんでもない爆釣劇だった。
こんな奇跡の大爆釣経験は今後二度と出来ないかもしれないが、その日のクロソイの活性にアジャストした釣りが展開出来たことが爆釣への扉を開く最大の要因になったと強く感じた。
大型のソイ=ヘビーベイトタックルと思われる方も多いことだろう。しかし、その中にあってより大物のヒットを連発したのは圧倒的にスピニングタックルによるライトテキサスによるものだった。ワームは3インチ。ガルプSWダブルウェーブ3”のホワイトグローカラーとブラックカラーがダントツで釣れた。続いて同ワームのCGBFO、ナチュラル、レッドの順で良く、カモ、モエビ、レッドバグキャンディーといった地味系や透過系カラーへの反応はお世辞にも良いものではなかった。ホワイトグローとブラックの2大カラーのソイへの反応の良さは釣っている本人もビックリするくらい、あからさまに偏ってバイトが集中した。(釣れ過ぎてこの2色だけ途中でワームのストックが無くなりましたが…。)
また、幾度となく投入したビッグワームは驚くことに、ことごとく撃沈。大型ソイへの実績が高い6インチのパルスワームも、今回に限っては8インチのガルプSWイールや10インチワーム共々まるでバイトなし。4インチのパルスワームでやっとアタリが出る感じ。当日の状況では明らかにワームサイズとワームカラーを巨ゾイ達は選り好みして喰ってきていたことになる。
東北ロックフィッシュシーンでは現在もワームサイズは4インチが主流で、3インチだと小さいと思っているアングラーも少なくないだろう。確かに、振り返れば近年の東北は一般的に釣り方も釣法もずっと停滞したままになっている。要は釣り方を進化・発展させるよりもフィールドパワー(場所の力)で釣っていた感も正直否めない。
しかし、魚も賢く進化していくように釣る側の私達もそれ以上に釣技に磨きをかけ発展させなくてはならないのだ。
現にお隣の北海道ではワームサイズは3インチが主流で、タフコンディション下では2インチワームも積極的に用いて釣果を揚げている。しかも釣っている魚は東北よりも全般的にデカい魚が多いにも関わらず、だ。
これは使うワームが小さいからといって釣っている魚も小さいとは限らないことを意味し、ブレードテキサスを始めとするブレードリグの発展系である「スプーンリグ」やダウンショットリグの発展系である「アンカーリグ」、そして軽いリグをヘビータックルで扱う「ヘビーライト釣法」やスピニングタックルにマーキングPEラインを使った「テンション0⇔100釣法」を編み出したのも、現代における最先端のフィッシングシーンに合わせた進化系そのものなのだ。
本州同様、人的プレッシャーの高まりと共にタフコンディション化が進んでいる道内のフィールドにおいても、年を追うごとに繊細に誘わなければ口を使ってくれない魚も増えてきていることは私もよく痛感している。
そういう時代背景も伴って、人的プレッシャーの高いオカッパリゲームでは既に3インチワームが主流・定番化した北海道では、4インチのワームだけでは対応出来ないケースが出てきたというアングラー達の率直な声であり、何よりの証なのだろう。これが示しているものは何なのか、ということを今回は自身改めて実感させられた。
その証拠に近年のシーバス界では小型バイブレーションによるマイクロベイトパターンの威力が注目を集めているし、スレたデカバス狙いのサイトフィッシングでは、ためらいもなく2インチワームを投入するバスアングラーも近年では多い。
東北ロックフィッシュゲームにおいても、3インチワーム=小物の数釣り用という、いつの間にか構築されていった誤解を解かなくてはならない時代に差し掛かっていることを、北のフィールドで今一度、再確認した有意義な釣行となった。
タックルデータ
■スピニングタックル<ライトテキサス>
●ロッド:シューティンウェイSWS-702Lスイミントレーサー
●リール:ステラ3000HG
●ライン:シーガーテンヤ1号
●リーダー:シーガーショックリーダープレミアムマックス20lb
●シンカー:タングステンバレットシンカー 3/8oz
●クッションビーズ:オーナー夜光ビーズソフト原色4号
●フック:岩礁カウンターロック3/0
●ルアー:ガルプSWダブルウェーブ3”
■ベイトタックル<ヘビーライト釣法PEバージョン&スプーンリグ>
●ロッド:シューティンウェイSWC-802EXHスキップラン
●リール:レボエリートIBHS
●ライン:シーガーバトルJライト1.5号
●リーダー:シーガーショックリーダープレミアムマックス20lb
●シンカー:タングステンバレットシンカー3/8oz、1/2oz
●クッションビーズ:オーナー夜光ビーズソフト原色4号
●フック:岩礁カウンターロック3/0、2/0
●ルアー:ガルプSWダブルウェーブ3”
※スプーンリグは20g前後で8cm前後の細みのスプーンが最適で、岩礁カウンターロック2/0とガルプSWダブルウェーブ3”をセットするのが基本。
●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq、アルマジロ13
●偏光レンズ:TALEXアクションコパー、TALEXイーズグリーン
TALEXモアイブラウン
★北海道留萌沖堤 渡船およびボートロック・ガイド船<留萌港>
■正宝丸 (斉藤船長 )【受付番号090-8633-8910】
2012年6月24日 | カテゴリー:雑誌掲載・DVD