北の大地を釣り歩く。(6)
積丹半島を南下しながら立ち寄ったサーフではベイトフィッシュの気配は相変わらずなかったが、単発でサクラマスの“ハネ”を見つけたので、少しここでやってみることに。
しばらくして、安瀬君のジグミノーに本命がヒットしたもののラインブレイク。
その後は「シーン……」とした沈黙の時間が流れ、そろそろこの場所は諦めようか…と思った10時半頃。「最後の一投」と放ったジグミノーの水面直下“高速引き”をしていた私にリールのハンドルが瞬時に「ガツン!」と止まるほどの衝撃が伝わる。
直後「ギラン!!」と大きく水面がフラッシュして、一目で大きなサクラマスであることを確認。
私は小学6年からサクラマス釣りを始め、高校3年の初キャッチ以来、幸いにも毎年サクラマスを釣ってきたが正直、地元の北上川水系河川のサクラマスはこんなに激しくは引かない。
「なに?これがこっちのサクラの引きなの?」って感じるほどファーストランの勢いがまるで違う。海で捕食モード全開の個体と河川に遡上し食性を失いつつある個体をリアクションで口を使わせて釣る“その差”というのを痛感した。それに背びれを出しながら猛スピードで横っ走りする様はサクラマスというよりは、まるでシイラのようで驚いた。
まさに北海道の海サクラは、“ちょっとした青物”感覚。
「サクラマスってこんなに引く魚だっけ?」と思えるほどのパワーとスピードに久々に鼓動が高まった。
しかしフックアップと同時に魚が猛スピードで突っ走っていったと思えば、そのままテンションが抜けていきバラシ。確実にフッキングを決めたかったのだが、魚の泳ぐスピードにリールのハンドル回転が追い付けず大量のラインスラッグが出てままだったので、その間にフッキングパワーが針先まで十分伝達されなかったのが原因だ。
その後はパタリと魚の気配もなくなったので移動。
更に南下を続け、今度は近年ヒラメ釣りで一躍有名になった岩内港に立ち寄って偏光グラス超しに海を覗き込むと、5~7cmくらいのカタクチイワシの群れがいるのを発見。
「ベイトフィッシュはいるから、マスも港内に入って来ている可能性ある」と睨み、ちょっとやってみよう!と28gのメタルジグをフルキャストした第1投目の回収間際に、なんと足元の岸壁際のコンブの下から40cmほどの海アメがルアー目がけて突き上げてきた。
が、タイミング悪くジグのフックがコンブに引っ掛かってしまい、追って来た海アメは水中でジグをじっと見たまま静止したかと思えば、プイッと見切ったようでいなくなった。
残念だったが、魚はいる。よりミノーライクにゆっくりトレースして少し離れた位置にいる魚も惹きつけていこうとルアーをメタルジグからジグミノーにチェンジしようとした矢先、隣でキャストしていた安瀬君の竿が軽く曲がる。
ヒットルアーは撃投ジグ28gのグリーンゴールドカラー。
サイズは可愛らしいが、紛れもない海アメだ。「あいや~サクラマスじゃなくて、アメマスでしたね~」と苦笑しながらもまんざらではない様子。
アメマスはサクラマスやカラフトマス(=ピンクサーモン)、シロザケ(=チャムサーモン)と共に北海道を代表するオーシャントラウトでもある。
ちなみに「マスとサケの違いは何ですか?」と思う方もいるかもしれないが、実は厳密にはその明確な違いはありません。
本来はマスもサケも同じ。
日本だけ独自の基準を設けて呼び方を分けてしまったため、変な誤解を生んでしまったまま今日に至っているが、分類上は同じ種類に属する魚達である。
いずれにしてもサケもマスも本来は海と河を行き来する魚。
本州では渓流でしか出会えないと思われがちなイワナ・ヤマメが海の漁港にいる姿は道内以外の方にはなかなか想像しにくいだろう。
きっと不思議に思うはずだ。
そういう意味では本州のフィールドではなかなか接することが少ない“海マス”釣りは本州在住アングラーからすれば斬新な対象魚とも言える。
余談ながら…、これくらいのサイズなら宮城県気仙沼港の岸壁でも海アメは釣れるそうですよ。
同港のシーバスで有名な場所で外道でちょくちょく掛かってくるケースですが、ローカルの間では以前から知られた話。
私は専門的に狙いに行ったことはありませんが、きっと近くにある大川から降りてきたエゾイワナ(アメマス)が海でウロウロしているのでしょう。
この魚も小型ゆえにまだ幼い顔つきをしているが、銀毛した中に浮き上がる薄っすらしたグリーンバックとそこに浮かぶ白い水玉模様はさすがアメマス。
実に美しい。
次回へ続く。
2012年7月26日 | カテゴリー:釣行記