カリフォルニアの空、カリフォルニアの海。(2)
サンディエゴ・ベイの夜明け。
いつも見慣れた時間帯。
釣り師にとっては日常でもあるこの時間だが―。
けれども、今は「海外」という“非日常空間”にいるという現実。
後ろを振り返れば、オレンジに染まる海面にペリカンのシルエットが遠くに浮かぶ。
いよいよ始まるのか…。
私はアメリカに、カリフォルニアに、“根魚”を釣りに来たんだ。
改めて、そう思える瞬間でした。
そんなカリフォルニア州サンディエゴも日本と同じく今は冬。
ただし、日本のようなはっきりとした四季はないので釣りに関しては釣れる魚の種類は多少変動するものの、基本的にはハイシーズンとオフシーズンの明確な境は少ないようです。
さて、カリフォルニアの海は世界で最もフサカサゴ科の魚が多く生息する海とされています。
要は、日本の認識で「メバル」・「ソイ」・「カサゴ」に相当する種類の魚がそれに該当する種族。もう少し細かく設定すると「ヤナギノマイ」や「メヌケ」なんかもこのグループです。
アメリカ圏では通常、これらの魚のことを「ロックフィッシュ」といいます。
その一方、日本でロックフィッシュというと……アイナメ・ハタ・メバル・ソイ・カジカ・カサゴなどなど、つまり根魚全般を全部ひっくるめて「ロックフィッシュ」という大まかな俗称で今日まで呼んでしまっていますが、本来はロックフィッシュ=メバル・ソイ・カサゴの仲間だけをそう呼びます。
ちなみにアイナメはグリーンリング、ハタはグルーパー、カジカはスカルピン、オニカサゴ(オコゼ系もやや含めて)の仲間はスコーピオンフィッシュという括りが基本あるため、それらと区別するためにフサカサゴ科に属する種類のみ「〇〇〇ロックフィッシュ」という正式な名称が与えられるのです。※〇〇〇の部分には個々の識別名称が入ります。
余談に次ぐ余談ながら、北米~カナダには「ソイのアルビノ種では!?」と間違われても不思議ではない白地に黄色い模様が入るソイ(カナリーロックフィッシュ)や真っ赤なソイ(バーミリオンロックフィッシュ)も生息しています。
尚、カナリーロックフィッシュは私の知る限りでは大阪にある水族館「海遊館」の水槽に展示されていますので、関西の方で興味がある方はぜひ見に行ってみて下さいね。
この他にも国内の水族館でも、海外に生息する根魚を展示している施設はちょこちょこあったりしますので探すと面白いですよ。
(このカナリーロックフィッシュの写真は2年前に海遊館を訪れた際に私が撮影したものです。)
いずれにしてもクロソイの仲間やムラソイの仲間、マゾイの仲間、シマゾイの仲間、アオゾイ(クロメヌケ)の仲間など…日本で“ソイ”と言われる魚(※アオゾイは少々無理やりな感もありますが…)の仲間達は北米大陸にはたくさんいるのです。
そんなカリフォルニアは寒流の色濃い海ですが、たくさん目撃したカルフォルニアシーライオンの姿もそれを物語る一つでしたし、ラッコやシャチがいる海も基本は冷たい水温の海域ですよね。
ペリカンも迫力大で(なんせ大きいですからね)、中でもペリカンとオスプレイ(日本で言う“ミサゴ”のこと)が海の上でエサを取り合ってケンカしている姿も野生の臨場感たっぷりで印象に残りました。
鵜(ウ)共に小魚を狙うペリカン。鵜以外にはカモメと一緒にいることも多々ありました。
こちらは浮き桟橋の上で海鳥達と一緒にいるカリフォルニアシーライオン。こんなシーンが目の前にあるんです!
こちらは仲良く昼寝中のようです。
通常、このような寒流の海にはハタ類は生息しないのが原則ですが、ここだけは世界的に見て凄く特殊な環境を有しています。
ソイ・メバル・アイナメ・カジカといった寒流色の強い根魚とハタの仲間3種が共存しているのです。
そのうち今回、番組でご紹介するのが「バードサンドバス」と「スポッテッドサンドバス」。
幸いにもどちらも最高な釣りに恵まれ、ロケを終えることが出来ました。
この他にも…
○カリフォルニアシープヘッド(カンダイ=コブダイの仲間)
○ガリバルディ(スズメダイの大型種でカリフォルニア州の魚に指定。釣るのは禁止。)
○ジャイアントシーバス(ジャイアントブラックシーバスとも言う。イシナギの仲間。和名ではコクチイシナギ。人間よりも大きく成長する超巨大魚ですが、その昔に乱獲され数が減少したため現在は釣るの禁止。)
○オパールアイ(メジナの仲間)
○カリフォルニアハリバット(カリフォルニア産のヒラメ)
○ホワイトシーバス(ニベの大型種。日本でいうオオニベに近い印象)
○レディフィッシュ(ご当地ではエソの仲間のことを言う)
○ボーンフィッシュ(フロリダやハワイにいる種とは異なれど、ボーンフィッシュまで確かに生息している)
○マッカレル(サバ)
○ボニータ(カツオ)
○スメルト(直訳ではワカサギの意味ですが、ワカサギがご当地の海にいるとは考えにくいのでそれに近いとされる種類の魚。ワカサギの仲間であるチカやキュウリウオも含む)
○レッドテールサーフパーチ(海タナゴの仲間)
○キャリコサーフパーチ(海タナゴの仲間)
○オーシャンホワイトフィッシュ(アマダイの仲間)
などなど……サンディエゴは寒流の生態系に日本では暖流域の魚と認知される魚種が、ここでは入り混じって生息しているのですから本当に摩訶不思議な海なのです。
それに加え、夏はイエローテール(ヒラマサ)、イエローフィンツナ(キハダマグロ)、バラクーダ(カマス)といった回遊魚も狙える環境。
こんな環境であれば、釣りたい魚はそれはもう沢山出てくるわけですが、全部を一気に狙うということはさすがに難しい。日本とは比べものにならない広大なフィールドから、狙いを絞ったターゲットを探し当てる釣りを展開しなければならないからです。
要は「魚を探す釣り」、ですよね。
そのような部分では限られた釣り場環境で、限られた魚数の中から目的の魚を的確に釣り上げることを最優先とする日本の釣りは「ピンの釣り」。
対して、海外のフィールドでは広範囲から己が目指す1尾の魚を探しながら同時に喰わせなければならない状況に必然的に迫られるので、アングラーに求められる釣りの幅はぐっと広くなります
なので、日本のバスフィッシンングでもちょっと前に流行りましたが「アンブレラリグ」(“アラバマリグ”とも言いますよね)にしてもそうですし、スピナーとラバージグが合体した「スピナーベイト」というルアーも、アメリカから生まれた背景というのも私なりの解釈で理解することが出来ました。
余談ながら、アラバマリグはストライパーとも呼ばれる、スズキ科のストライプドバスを釣るためのリグがルーツとされています。その後、淡水のバスフィッシング、それもアメリカのバスプロトーナメントで結果を残したことで、日本へは最初からバスフィッシング用のリグとして紹介されて入ってきていますが、本来はソルトウォーターフィッシングにおけるスズキ科の魚向けリグとされています。
いずれにしても、海外での釣りは広域からターゲットを集魚する必要がまずは「前提」としてあるわけです。
2014年2月13日 | カテゴリー:釣行記