ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。
NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)評議員

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

みんなで楽しむロックフィッシュゲーム(2)

岩手県重茂半島―。

続く、釣りの後半はボートロック!

「ボートロックは今日が初めて!」という人もいて、念願のボートロックの出船を前にワクワク感が止まらないようで、皆それぞれお待ちかねのようです(笑)。

 さぁ!それでは本日の釣行、後半の釣り(ボートロック編)へ参りましょう!!

 

ともあれ、先程までやっていた岸釣りの状況が近距離では厳しかった現実を船長に伝え、あまり磯際まで近寄らずに岸から100mはボートポジションを沖に離した位置(ロングスピン釣法でのジグリグで私が超遠投していたのが90mほど沖だったため)を横方向に広く流していってくれるようにオーダーしました。

やり込んでいる方ほど周知の事実としての認識通り、ボートだからといって、簡単に釣れるほどロックフィッシュゲームは甘くはないです。

むしろ、ボートの方が船が同じ場所にずっと留まれない分、すぐにポイントから外れるためキャスティングのアキュラシーと攻めの精度という意味では難しい場合も多々あります。

 

なのでどちらか一方に偏った釣り、というよりもバランスよく多彩なシチュエーションを釣り込むことでロックフィッシュゲームの世界はもっと奥深いものになるでしょうし、何よりも楽しいですよね!

それに同じ船の中での共有するメンバー同士の時間というのもまたボートフィッシングならでは!!

①

タイミング良く、船中第1号の魚は中田君と私にアイナメのダブルヒットでした。

 

その後、私は少し狙いを変更。

密かに「ソイ狙い」に…。

北海道のように特定のソイの1種類の、それも大物だけを狙うというのは東北では現実としてなかなか難しいところがあるので、本州以南の場合には釣れなければそのまま終了!(笑)となってしまいますが、それでも「意識して狙わなければ釣れないのもまたソイ」なので、皆さんがアイナメを狙っているうちに私は「よりソイを意識した釣り方」へシフト。

この時期の重茂半島周辺ではクロソイとマゾイがターゲットとなりますが(ただし、毎回釣れるとは限らない)、重茂半島を含めた北三陸エリアといえば浅場でのマゾイ狙いも比較的有望な地域であることから、マゾイを強く意識してみました。

この時期は35センチ~40センチ前後のマゾイが浅場の磯周りでも比較的、掛かりやすい時期。私の中での季節的には、11月~1月初めまでがそのタイミングです。

マゾイはクロソイほど顕著にレンジの上下はないものの、数あるソイの種類でいえば、やはりどちらかというとクロソイに近い習性を持っています。その点ではムラソイやベッコウゾイとは違う。

それに、マゾイと同じ深場を好むシマゾイともやはりちょっと違いますね。マゾイはクロソイよりも深海性が強い種類だけに、好む水深も相対的にクロソイよりは更に深場に生息環境を見出したソイです。

現時点、ボートの真下で水深13~15m。

この水深であれば、この時期のマゾイは上がってきている可能性がある。この時期のマゾイはカタクチイワシなどの回遊系のベイトフィッシュが岸近くを回遊している状況だとクロソイと共に40センチ前後~40センチ前半級の大きさまでの魚であれば差して来ることがあります。ちなみにクロソイが掛かる場合にはもっと大きなサイズまで出る可能性はあります。

特にドン深なワンドにカタクチイワシの群れが大量に入り込んむような状況があれば、その翌日などはアイナメ狙いに来ているのに朝一からいきなりクロソイやらマゾイが続けてヒットしてくるケースも―。

岩手県北エリアで見られる特徴ですよね。

ということでソイがルアー(リグ)を咥えるためのタイムラグを稼ぐことが容易な低比重シンカーである「クランクシンカー」の効力がとりわけ活きる瞬間がまたやってきました。

水深は先述した通りなので、底取りを考えれば1ozが楽なのでしょうが、ソイ狙いでは水深に対しての最も扱いやすいウェイトに対し、意図して“ワンランク軽めの重さ”をセレクトすることでそのヒット率を更に高めることが可能となる場合もまた多いのです。

なので、今の状況に対しては「こだわりの3/4oz」。

ルアーは重茂半島では一層と使用頻度の高い、バークレイ/パワーベイト・パワーホッグ4インチ。

②

パワーホッグ4”は歴代色々なパッケージや種類(マテリアルや匂いが全部違う)があるのですが、上(↑)の写真は現在市販品の「パワーベイトSWパワーホッグ4”」になります。

この海域では「レッド」と「チェリーシード(チェリーキャンディーシード)」カラーだけは外すことが出来ません。このルアーのこの色がないだけで対応出来ないことも多々あるし、むしろこの2色さえあれば、とりあえずはなんとかなる!という認識くらいの勢いで私は長年使用しています。

ちなみにソイだけを専門に狙うのであれば別にホッグ系でなくともいいのですが、仮にソイが居なくて喰わなくてもこのパワーホッグであればアイナメと鉢合わせ出来ればアイナメがソイに替わり口を使ってくれる、という安心の元のセレクトです。

ワームカラーはソイ狙いには白系カラーというのはやはり有効ですが、これも同じ「もしその場にソイが居なければ…」の理由でアイナメの好む赤系で、日中の陽のある時間帯ということで今は「チェリーシード」カラーをセレクト。

幸いなことにソイはアイナメほど、物凄く細かいカラーの選り好みの少ない種族の魚だというのは釣り人にとってはありがたいです…。

 

その読みは的中。

超スローフォール&ハイリフト(竿1本分の大きなストロークでのリフトアップ後のロングフォールで「コツン」とアタリが。

アタリの出たレンジ(位置)とアタリの出方で「あ!これソイだ!」とすぐに分かったので、一応全力でアワセると案の定、ロッドが大きく絞り込まれる。

40センチのソイであれば、50センチのアイナメと同じくらいの抵抗感が掛かるので引き方を通してこれは40センチ前後であろうソイを実感しつつも楽しいファイトを繰り出す。

この時点で分からないのはソイの種類だけ。

掛かっている魚がクロソイなのか、マゾイなのか―。

③

水面に浮上するまでよく引いたのはマゾイ(キツネメバル)でした!

念のため、測ってみたら40.5センチありました。

④

マゾイ、横持ち。

 

マゾイは同じサイズであればクロソイよりも体高があるので水中でかかる水圧も相当なもの。

⑤

それだけに引き具合も重々しい引き。

重々しい引きで言ったら、一瞬だけなら、それこそ特大ムラソイや大物シマゾイの引き具合さえも彷彿とさせてくれます。

⑥

クランクシンカー3/4oz+ロックンビーズソフト+岩礁メガトンロック2/0の組み合わせです。

⑦

クランクシンカーのスローフォールが効いた釣果でした。

 

この魚に続けとばかりに、「ソイ釣りたい人がいたら、同じようにやって下さいね~」と伝えると中田君がチャレンジ!

 

その間にも私はポツポツのアイナメの釣果を重ねました。

⑧

このアイナメが吐き出したベイトは、どうやら貝のよう。ツブ貝の仲間でしょうか。

この他にアワビを吐き出した個体も多くいました。

アイナメは甲殻類や小魚、環虫類や魚卵の他に、「貝」を食べているのを各地で度々見かけます。

例えば、東京湾内のアイナメは巻貝(しかも!殻ごと全部)を多数捕食していたこともありましたし、北海道の苫小牧では釣りあげると捕食していたホッキ貝を吐き出すアイナメもこれまでずいぶんと見ています。

確かに苫小牧はホッキ貝の有名な産地。が、しかし…アイナメ達はどうやって食べているのだろう…といつも不思議にすら思います。

 

そして、余計なお世話だとは思いましたが「ソイを釣りたい」という中田君の奮闘は続いていたので、それを見て老婆心が働き、一通りもう一度説明し、同じように操作をした中田君についに待望のアタリが!!

「たぶん、それ大きいソイだよ~。」

「マジですか!! ソイですか!!」

⑨

こんな言葉のやり取りの後、水面に浮上したのはまぎれもなくソイ。

しかも中田君のマゾイ自己ベストだという42センチ!!

「うわぁ~マゾイ!! デカいです、やりました~!!」と普段はシャイな中田君も大喜びの様子。

リグは同じくクランクシンカーのテキサスリグでヒットルアーも私と同じくパワーホッグ4インチ。

しかし、時間の経過で太陽光が減光し陽に曇りが出てきた時間帯につき、クリア系レッドであるチェリーシードではなく、ソリッドレッド(普通のレッド)カラーをセレクトしてのヒット。

⑩

このあたりの色の選択は、まさに中田君の読みの鋭さです。

実に見事な魚でした。良かったですね!おめでとう!!

 

と、こうしているうちに昼12時30分過ぎに出港の午後便ボートロックの時間も午後3時に。

今日1日の釣りでは岸釣り半分、ボートロック半分の実釣だけにそれぞれのタイムスケジュールが短くなるのは仕方ないこと。

それに我々には帰りの時間も長時間を要することと、船長は3時30分には再び所属する漁協の仕事があるとのことで、この釣果を持ってボートロックはお開き!

他の同行メンバーは1人あたり1尾~3、4尾くらいのアイナメの釣果がありました。(ちょっと今年はアイナメの数がやはり少ないのですよね。)

 

 

遠征の地では限られた釣りの時間を有効に使う意味でもその実釣時間を半分ずつ岸釣り・ボートと楽しむのもありなのだなぁ、と思いました。

逆の見方をすれば、ひとつの釣りにずっと集中出来ないので場合によっては中途半端にもなるのですが、年齢も釣りの経験値も皆バラバラの人達が集まって一緒に釣りをする場合には、時にはこういった時間の使い方もありだと思ったのが私的な感想です。

今回の釣りでは私自身もよく知っているフィールドであることに加え、集まったメンバー中、私(+勝又君)が最年長者ということもあり、たまたま仕切り役を務めましたが、普段の釣りで仕切り役をやっている方がいらっしゃれば、そんな時間の過ごし方もまた釣りスタイルの一つなのかもしれませんので何かの参考になれば幸いです。

私の望む釣りは、一緒に行った皆が事故や怪我などなく、どうか楽しくあってほしい。

同じ時間を共有し合い、楽しい釣りの思い出のひとコマにしてもらえるような雰囲気をそっと陰ながら醸し出せればそれでOKなんです。

釣れても、釣れなくても釣りは釣りですからね。

逆に、自分が本当にどうしても魚を釣りたい!獲りたい!という時には私個人+もう一人くらいまでの人数でしか行きませんし(安全なポイントでは普通に一人で釣りに行ってしまう人なので)、何がなんでも絶対に釣らなくてはいけない場合というのはクライアントがついているテレビやDVD、PV、雑誌やカタログ撮影等のロケの時ですから、そんな場合での釣りというのは、基本的には釣り人は決まって私一人の場面です。

時間ごとで「釣りの進め方」が違うのがロケで求められる釣り、でもありますから、やはり釣り場で流れる時間軸がそもそも違うのです。

そんな公にご紹介するシーンにおいては、ただひたすらに自分本位な釣りをしているだけでは、制作(メディア)側も、視聴者も、読者も、納得はしないはず。

実釣シーンを除いた解説(しゃべり)に十分な時間を割くのも、これまで私が携わってきた作品にみられる特徴の一つとなっています。

それが私なりの仕事の仕方であり、釣りに対する礼儀であり、流儀であったりもします。

 

10代後半―。大学在籍時からこの世界で一途にやってきて思うのは、昔(10代後半~20代前半くらいまでの、もうちょっと若かった時)はもう少し“釣果寄り”の釣りを展開していたので、当時は若さ故あまりそういうような想いや考え方ではなかったけれど、2014年も年末に差し掛かった32歳の今はそんな感じ(ちょっと、ゆるーい感じの釣り)が本当に楽しくて仕方ないのです。

それが結果的に釣れようとも釣れなくても、あまり大きな問題ではなく、「魚釣りの時間そのものの時間や雰囲気」を最大限に楽しめれば満足。

 

ご同行の皆さん、楽しい釣りの時間を一緒にありがとうございました。

また機会をみて、ご一緒出来れば幸いです。

 

 

タックルデータ

■ベイトタックル(PEラインでのテキサスリグ用)

●ロッド:シューティンウェイSWC-722EXHブラインドサイト

●リール:エクスセンスDC

●ライン:シーガーマルティア2号

●リーダー:シーガーグランドマックスFX 5号

●シンカー:クランクシンカー3/4oz、1oz

●クッションビーズ:ロックンビーズソフト

●フック:岩礁メガトンロック2/0、岩礁カウンターロック3/0、2/0

●ルアー:パワーベイトSWパワーホッグ4”

                パワーベイト/パワーホッグ4”

 

●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq

●偏光レンズ:TALEXアクションコパー

 

★岩手県重茂半島ボートロック船宿(重茂地区)

■勢運丸(佐藤船長)【受付番号0193-68-2534】