毎年欠かない春の恵みを拝受する喜びは、言葉での表現を超えうるものがある。
それが「サクラマスの釣り」、なのだ。
一喜一憂の出会いを確実にものにしたいがために選ぶ針はこだわりの赤針。
カルティバST-46 RD。
61センチという全長以上に、体高以上に、ずっしりとした厚みある3.5キロ超の重量をホールドし続けた、頼りの支点だ。
針先まで染まる紅の彩がもたらす機能面はもちろんだが、この色に託す想いもまた“情熱”を表す。
雪代の流れの筋を立体的に浮き上がらせた視界として見せてくれるTALEXの新色レンズ「ラスターオレンジ」の存在もまた大きい。
ローライトな朝マズメでも多用する同イーズグリーンのブライト性能を有しつつ、ラスターブラウン寄りのコントラスト性をうまく融合した、新機軸のレンズだ。
そんな優れたレンズを生かすも殺すもフレーム次第。
組み合わせるフレームは相棒・Vanqの血統を受け継ぎ、その装いを一新したENZO(エンゾ)。
サイドカウルにはアングラーの勲章として、釣り針をあしらった紋様が刻まれている。
Vanqからしかと引き継がれた機能とその意志は、釣り師と共に雨の日も風の日もこれから新たな旅路を重ねていこう。
海の力を蓄え、山を目指す大鱒を釣りあげる意義。
それは北国に住まう者にとっては尚をこと、意味深いものに違いない。
1匹のヤマメが奏でる壮大な旅路。
北の海で、どんな大冒険をしてきたのだろうか。
どんなに旨いエサにありつけたのだろう…。
どんな仲間たちと歩みを共にしたのだろう…。
もしかしたらシャチやイルカ、トド、アザラシの奇襲に怖い思いもしたのかもしれない…。
それもまた山の緑と海の青の彩りを纏ったヤマメの雄姿。
北海道・東北・北陸といった高緯度の雪国に暮らす釣り人にとっては、とても大きくて、偉大な存在でもあるサクラマス。
今日もまた多くの太公望が憧れの魚を追い求めるのだろう。
北の海には、北の河(かわ)には、北の湖には、こんなにも「すっげ~大鱒(マス)がいるんだぜ!」と誇らしく想う魚だ。
銀鱗、舞い散るが如し。
ここは東北、宮城県北上川。
この春もまた貴重な大鱒との出会いに感謝しつつ、季節は桜から新緑の候へと移ろいでゆく時がやって来た。
■タックルデータ
●ロッド:シードライバーNSDS-90ML-PW
●リール:ヴァンキッシュ4000
●ライン:シーガー試作PEライン1号
●リーダー:シーガーグランドマックスFX 5号(20lb)
●スナップ:カルティバ/クイックスナップ2号
●ルアー:蝦夷ミノー90ディープ
●フック:カルティバ/ST-46RD ♯5
●ジャケット:リトルプレゼンツ/サーマルウェーディングジャケット(JK-11)
●ウェーダー:リトルオーシャン/ハイブリットウェーダー(OW-04)
●フリース:リトルプレゼンツ/フリースベスト(JK-13)
●パンツ:リトルプレゼンツ/LPウォームパンツ(P-14)
●偏光グラス:ZEAL OPTICS/ENZO
●偏光レンズ:TALEXラスターオレンジ
2015年4月28日 |
カテゴリー:釣行記
例年、年度末(3月)と新年度(4月)を抱える春は一年の中でも釣り具業界も多忙を極める時期につき、この世界に身を置く小生も例外に漏れず釣行する機会にはなかなか恵まれない。
とりわけ3月のせわしなさは忙殺的だ。
“釣りのサイクル”に当てはめれば、「3月」という月はサクラマスの釣りが本格化する季節につき、毎年この時期ならではの釣りを楽しみに迎えるものの、出張続きの巡業シーズンとも重なるため、あいにくサクラマスの舞い戻る川が織りなす時間や情景を感じずの日々もまた続く。
いち個人の釣り人としては少々残念ではあるが、私とてどんなに頑張ったところでこの世界の歯車の一部に過ぎない。故にそれもまた仕方ないこと。
それだけに…。
それだけに、限られた時間枠を作れれば、都会の喧騒とはまた別の時の流れに身を置きたくなるもの。
そうなのだ。
早春の川に立つことは、魚が「釣れる」・「釣れない」では語りきれない、自身にとって大きな意味合いを持っている。
その日は桜の開花をまだ感じさせない、寒が肌まで突き刺すような早朝だった。
空が白んで来た頃、気持ち早にキャストしたいという衝動に駆られるが、いきなりは投げない。
川を観察し、魚の気配があるのか、ないのかをよく見極める。
釣り師の眼力は視力以上によく出来ているから、その持前の動体視力は今日も“それ”を見逃さなかった。
魚は浮いている
沖合いに幾多かの気配を察する。
私以外にも周囲にいた釣り人達もそれに気がついていたことだろう。
一斉に沖に向かってのフルキャスト音が辺り一面に響き出す。
今日もまた人の想いと願いが込められたスプーンが、大河の流芯目がけて一斉に勢いよく飛んでいくのだ。
さぁ!
私も釣りを始めよう。
沖合いで浮いた魚を狙うのであれば、運がよければ一撃で掛かることもあるかもしれないが、一斉にヘビースプーンが飛び交えば、“本流の女王”たるもの、その異様な気配を即座に感じ取るに違いない。
サクラマスを狙う釣り人の意気込みたるもの「ある種、異様」なものだからそんな殺気を察すれば、その停滞レンジも下がる(沈む)か、その場から離れて移動していってしまうのが生き物である「魚」としての正しい行動だろう。
状況はシビアだ。
だから今は、あこそにいる魚とは違う魚を目指す。
もっと手前。
足元ではない。
かと言って、遥か沖合いでもない。
この川ではブレイク沿いで夜を明かし夜明けと共に動く魚がいる。
魚が動く時間は僅かなもの。
そのことを知っているから、今は「その条件での魚」を獲りたいのだ。
ルアーはミノーがいい。
サクラマス用のディープダイバーの出番だ。
流れの押しが強いから、出来るだけ潜るルアーが望ましい。
リップが強い流れを掴んでも流れの重さに負けず、浮き上がることなく真っ直ぐに潜航し任意の層に留まり続けるロングリップ…。
タックルボックスの中にあった一番深く潜るタイプを選んだ。
1投目は様子見。
ルアーが合ってなければ、すぐに変えるための判断基準にする。
2投目は目的のトレースゾーンまでルアーが確かに潜っているか?の確認の意味合いを求めるキャスト。
3投目からは“狙いを定めた”キャストを心掛ける。
重複となるが、夜明けと共にルアーに反応する魚が釣れる時間って本当にわずかだから、この時合で魚を獲る場合にはその志として「狙いを定めて」威風堂々としたキャストで挑みたい。
●迷わないこと。
●躊躇(ためら)わないこと。
が、肝心だ。
そのキャストで投じたディープダイバーを川底でサクラマスは襲った。
投げた飛距離の1/3ほどをルアーが通過した時のことだった。
アワセと同時に圧し掛かる魚の重みで相手は小さくないものと判断していたが、川底を這うように動いていたものが急に浮き上がり突然のジャンプを披露。
3キロは確実に超えている魚体。
重々しい引きをロッドは受け止めながら曲り続ける。
寄せにかかれば、相手は再びの反撃を仕掛けてくる。
すんなりあがってくるような気性の持ち主ではなさそうだ。
朝日が水面(みなも)に差す大河にドラグの金属音が鳴り響く。
寄せてはまたラインが出ていく、の繰り返しを何度か―。
少しの緊張と「絶対に獲るぞ」という揺るぎない男の狩猟本能はこの瞬間にこそ必要なもの。
一心に魚と向き合う時間は終焉を迎えた。
雪解け水の濁った川にこの春もまたサクラマスが横たわる。
喜びを噛みしめる時間の始まりだ。
<次回に続く>
2015年4月27日 |
カテゴリー:釣行記
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連載
■ロックの世界を広げるロングスピン
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写真と文・佐藤文紀
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2015年4月25日 |
カテゴリー:雑誌掲載・DVD
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■ターゲット対応 達人オススメロッド
ロックフィッシュ×佐藤文紀
ぜひ、ご一読くださいませ。
2015年4月21日 |
カテゴリー:雑誌掲載・DVD
雨、したたる北上の水辺。
釣り人は何を想い、今日もまた川に正対するのか。
三寒四温。
朝夕の寒暖の差さえも、時に降り注ぐ雨粒さえも感じないようになると“本物”だ。
いや、感じないというよりは「気にしない」、という表現が正しいものであろうか。
これら人の本能に与える苦痛すらを忘れさせ、今日もまた真摯に川に向き合う釣り人達。
その精神はどこから漲る(みなぎる)ものなのか。
どこから湧き上がるもの、なのだろうか。
「サクラマスを釣りたい。」
その一心に、ただただ尽きるのだろう。
かつて、道北の湿原でただ一人、イトウを追い回した雨の日々の己の記憶と今日もまたサクラマスを狙う彼らの情景もまた、ふと重なるものがあった。
この日、私が遭遇した友人たちがそれぞれ手にしたサクラマス。
春雨、降りしきる北上川に今日もまた歓喜の声が轟(とどろ)く。
「大きさ」や「重さ」と言った数値で表せられるような表現とは異にする存在がそこにはある。
人生初のサクラマスやシーズン1尾目のサクラマスともなれば、尚のことそうだろう。
大河で出会うサクラマス。
大洋の遥か沖合いで出会うサクラマス。
磯や渚(なぎさ)で出会うサクラマス。
あるいは、渓流での望外の再会を果たすサクラマス。
海の港やダムの湖岸にもサクラマスに通じるその場は広がっていたりするものだ。
それらすべてが、「サクラマス」という魚が醸し出す、彩。
誰にとっても、サクラマス。
釣り人が抱くその憧れは、きっと永遠のものだろう。
この日もまた素晴らしい釣果、おめでとうございました。
その瞬間に立ち会える喜びもまた幸運なもの。
人が全開の喜びに浸る瞬間に、その場の風景の一部に自分が存在していたりすることもまた魚釣りでの大きな喜びです。
桜前線と共にめくる、“サクラ”前線。
海も、川も、湖も。
その1尾を願うなら……困惑にも屈せずにその時間さえも楽しむこと。
一見、「遠回り」に感じることもあるかもしれないけれど、私も長くこの釣りをやってきて変わらぬ想いで感じるのは、それがサクラマスへの王道だと思います。
さぁ、引き続き―。
春の光景、あの銀影を追う極上の時間に酔いしれよう。
水と光と太陽と、ともに。
2015年4月17日 |
カテゴリー:釣行記