ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。
NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)評議員

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

極上の色彩美! アカハタゲームの醍醐味(1)

真っ黒な瞳に、全身が燃えるような紅の魚体。

A

和のテイストを醸(かも)し出す、塗りもののような極上の美しき根魚。

国内に生息する近海ロックフィッシュゲーム・ターゲットのうち、最も色彩の美しい根魚といえば、ご覧の「アカハタ」がその筆頭格だろう。

20~30センチ前後が平均なのでハタの仲間としては小型に属する部類で、人気の“三大ハタ”のうちキジハタやオオモンハタよりは大きくはならない。

だが、釣魚としての魅力がそれで欠如するものではない。

アカハタが有するそこにある“存在感”はある種、別格のもので、紅色やオレンジ色など…1尾ごとに違う体色・色柄は、まるでアーティストが渾身のタッチで描いたような色彩だ。

C

そう、見る者にハッとさせる自然の色彩美を誇るのだ。

「なんてきれいな魚なんだ…。」釣りをする誰もが、見ればきっと虜になる、そんなロックフィッシュが今回綴るアカハタという存在。

 

この日は静岡県伊豆半島へ。

①

伊豆半島は、半島部の東西で黒潮の作用が異なるため釣れる魚種の密度に差があり、そこが興味深い。

同地といえば尺メバルのメッカとして名を馳せるだけでなく、アオリイカのエギングに至っては関東近郊では屈指のメジャーポイントでもあり、メジナやマダイ、イサキなど磯釣りや船釣りも非常に盛んだ。

夏のシイラや冬のタチウオにアブラソコムツ、バラムツもルアーアングラーにとっては広く知られた暖流の色濃い海である。又、ヒラスズキの名所としても有名である。

 

深海生物の世界的宝庫でもある駿河湾に面している西伊豆の海もまたドン深だ。

パッと見た感じの風景は東北の三陸リアス式海岸にも似ていて、岩場は切り立っていて足場は良くはない。

それだけに、磯でひざを突く際に岩肌と接する痛みを防ぐクッションとなる撃投ニープロテクトスパッツもこの日の釣行から役立っている。

自分の立つ足元から真下にルアー(リグ)を垂らしたところで一番最初のポイントでは15m、次に移動したポイントでは水深23mあった。

水深が20mを超えてくるとフロロカーボンラインだと底取りしづらいため、この場合にはPEラインの方が楽である。

水深をしっかりと判別するため、1色染めの単色PEラインよりメーターごとのマーキングが入っているPEラインの方がこういった釣りでは効率的だ。

⑩

5mとか10mとか、普段浅い水深帯を専門に狙っている場合、「ショアからのロックフィッシュゲームの範囲で水深20m以上」と聞くとそんなに深いのかと驚くこともあるかもしれないが、それは浅場だけで従来のロックフィッシュゲームが成立していた時代があったことが大きい。

魚が多く、釣る人も少なかった時代だ。

時が進んだ昨今、岸釣りにおいても「ディープ攻略」は魚を釣っていくうえでの一つの課題であり、それを切り開く大きなキッカケとなった魚が近年、爆発的人気を博するキジハタをデイゲームで狙う、という進展である。

デイゲームでハタを狙う場合には水深は深場まで狙えた方が釣りとしては断然にいい。

あまりにも浅過ぎる水深だと元々に魚が寄りついていない場合や、魚が不在の場合もあるためだ。

魚種ごとに好む水深が違うので、魚に見合った水深を的確に選んで釣りたい。

ちなみに本日のアカハタ釣り、「23m」という水深(足元で)であるが、これでもアカハタを狙うにはこの周辺海域なら水深は最低13~15mはほしいところなので、磯際での23mは願ったり叶ったり。

20~30mラインがこの一帯ではアカハタの生息密度が高まるため、個人的にはショアからの釣りであれ、深さが25mあっても、30mあってもウェルカムだ。

 

最初のポイントでのことー。

1ozの直リグシンカー(カルティバ)を用いたジカリグで最初の1尾。

②

狙いに狙って獲れただけに、とてもうれしいものだった。

ワームはパワーベイト/ダブルホッグ3”(色:ジューンバグ)。

フックは岩礁メガトンロックの2/0。

一度、上記の1/0フックでアタリがあったものの、乗せきれずフックアップしなかったので、オフセットフックのみ同製品の1/0から2/0にサイズを上げて同じワームをそのままつけて同じ場所に入れ直して、再びバイトを捉えたのがこちらの1尾だった。

アタリがあるのに乗らなかった場合に「その魚を獲ろう」とするならば、即ワーム交換するよりも、まずはワームはそのままにして針の番手だけ上げるようにしている。一度でも針に乗せてしまったら原則セカンドバイトへの期待値は大幅に減少するが、アタリだけを感じたものであれば、仮に釣りあげられなかったまでもそのワームの形や色、大きさに対してアタリがあったのは事実なわけだから、それをわざわざワームを別製品に交換してしまうと次の投入で魚が反応せず、結果アタリが出なくなってしまう場合もロックフィッシュゲームではよくあることなので、この点だけは留意したいところ。

その見極めこそ、とても大切なんです。

 

ワームだが、形状と色はイセエビの幼体を意識してのこのセレクト。

それと通常のパワーホッグ4”よりもダブルホッグ3”の方がワームサイズこそ小さいが、後者の方が装備されたパーツが大きいことで水中でも抵抗が大きくなる分、フォールスピードを遅らせることが出来る。

リグの習性として、ジカリグはテキサスリグよりも遥かに素早くスピードフォールするため、せめてもの誘いの動作をワームに集中させるべく、ホッグ形状のシルエットをキープしながらもダブルホッグに搭載された厚みのあるカーリーテールがバタバタを水を蹴り返すことで、直リグのフォールスピードを必要最低限に抑えるブレーキをかけるために、という理由ももう一つである。

魚の目の前にリグが落ちる時の「フォールスピード」とそこにあるワームの大きさ・形状・色は凄く重要。

更に匂いがあれば、尚のこと良し。

③

アカハタは、エビ類がとにかく好きな甲殻類イーター。

甲殻類も様々な種類が各地に生息しているわけであるが、アカハタが捕食しているカニとエビの捕食割合としては断然、エビの方が多い。

魚食性も強いハタ科の仲間において、その中ではアカハタの甲殻類捕食率は他のハタ以上の比率だ。

それと、もう一度「リグ」について補足を。

同じ1ozでもジカリグとテキサスリグとではフォールスピードがまるで違う。直線安定性に優れるジカリグの真っ直ぐな軌道でのフォール速度はテキサスリグよりも断然に早い。

なので、潮の流れが速いとか、テキサスリグの1ozでも着底が心配な場合には、まずはウェイトを変えずにテキサスリグからジカリグにすることでその心配が改善されることがあるので覚えておくと便利である。

 

同地ではアカハタ釣りをしているとカサゴも交じる。

④

こちらはジカリグでの1尾。

地域を問わず根魚が相手である以上は安定した釣果を出す、ガルプSWダブルウェーブ3”(カラー:レッド)。ビジブル系とエビを意識した両面からのセレクトだ。

 

そしてこちらは、ロングスピンで超遠方から獲った1尾。

⑤

なんと!このカサゴに至っては28センチもあったから凄い迫力だった。

クランクシンカーSP 1oz+ロックンビーズソフト+ツイストロック1/0+ガルプSWダブルウェーブ3”(カラー:レッド)。

カサゴもアイナメ・ソイ・ハタ・メバル・カジカと並び独立したロックフィッシュターゲットだけに今以上に本気で狙えばもっと釣果は伸びることと思うが、今日はアカハタに狙いを絞っている。

しかしそれでも釣れる分には非常にうれしい魚だ。

 

釣りの途中、沖からの潮目が寄って小魚(カタクチイワシ)が湧き出したら、今度はサバの群れが回遊してきた。

⑥

ブルーオリオン30g(カラー:アカキン)をキャストして、ただ巻き。

投げたら「ただ巻くだけ」で、立て続けに4尾キャッチ。

根に潜ろうと縦方向に引っ張る大半の根魚とは異なり、横にギュンギュン!と突っ走る青物の引きもまた痛快だ。

⑦

こんな出会いもまた黒潮の恵み。

 

カサゴやサバも楽しみつつ、今は深場にいるであろうアカハタを引き続き狙う。

本日の釣りの最後はロングスピンに託そう。

「岸から100m先(あるいはもっと先)の根にいる魚の目の前にワームをピンポイントで送り届けたい。」

これが私がロングスピンに思った最大の理由であるが、実際に100m先までワームを飛ばすことは現実として現状のリグの場合だとなかなか難しいかもしれないが、それでも一般的に考えればベイトタックルよりは飛距離が出ることは確かなので、今現在、ショアからの国内ロックフィッシュゲーム全般においては確かなメリットを感じている釣法のひとつだ。

リグの着水後はラインメンディングをしっかりとし、沖のディープの海底までスローにワームを落としていく。

足元で水深23mあるのだから、沖の海底はもっと水深があるはず。

飛距離にして80m以上投げていて、更にそこから海底に向かってフォールしていけば必然的にラインは100m以上出た状態でリグを操作していることになる。

本日3尾目のアカハタがワームを咥えた。

これからはじまる「100m分」のファイト。

⑧

針掛かりしたハタの抵抗はカサゴ以上なので、ロッドにかかる負荷もそれ相応の重さになるからやり取りは内心少しハラハラする。

瞬間的に走られて根に潜られないか、針が外れないか、については終始、神経をつかいないがらファイトすることを心掛けよう。

⑨

余談ながら、油断すると一気に根に潜られるので注意が必要だ。

特にキジハタは厄介だ。

ハタ科の魚の馬力はアイナメ・ソイ以上に強いから要・用心。

 

アカハタ3尾にカサゴ3尾、サバ4尾がこの日の私の釣果。

これら釣果には偏光レンズの存在も大きい。

gaga

夏の西伊豆は黒潮の影響が色濃い海だけに、偏光レンズもロックフィッシュゲーム全般で着用するTALEXアクションコパーから、この時には「TALEXマスターブルー」にして対応。

尚、フレームはZEAL OPTICSのVanq gaga(ヴァンクガガ)のブラック&シルバーです。

TALEX社の数々の偏光レンズのうち、この「マスターブルー」というレンズは、「黒潮の水色」とレンズカラーがマッチするように出来ており、更に海面(表面)付近~海面から一番下がった層を見ることに長けたレンズ。

事実、磯フカセでのメジナ釣り愛好家には特に好まれている“青いレンズ”だ。

マスターブルー

今回の釣り場は足元からドン深でボトムまでは直接目視することは難しいことから、ボトムを直接見るためというよりも、むしろ更に意識したのは「潮目の寄り具合を見ること」と、「海の色とレンズの色を同調させること」を第一にした偏光レンズのカラーセレクトも大きく貢献してくれたものだった。

潮目の寄り具合を目で見ることについては、その考え方は次の通り。

沖から差してくる潮は総じて水温が高い。

付近の平均水温は測定の結果18~19℃だったので、アカハタ釣りの目安である「水温20℃」の水温帯がもし岸近くまで差してくるのであれば、その目安として沖から接岸してくる潮目の動向に偏光レンズ越しに着目して、潮目の当たり具合と魚の居場所を出来るだけリンクさせて、水温の高い場所に狙いを絞って意識的に釣っていこうと思っていたから、である。

普通に釣りをする分にはそこまで意識しない人も多いかと思うが、希少なアカハタを、ただでさえ難しい“走りの時期”に、それもショアから確実に物にするためには、やはりそこまで徹底して「抜かりない戦略」を立てて釣りをする必要があったのだ。

ロッドやリールには多額な金額を投じるベテランアングラーでも、釣行毎に偏光レンズを使い分けするという釣り人は世間一般にはまだそれほど多くはないかと思われるが、天候はもちろんのこと、それ以外にも釣り方と釣り場の水深、作用する海流の違い、地域、緯度によっても偏光レンズのカラーセレクトを適材適所に用いることによって、おのずと釣りが楽になり、結果、釣果に繋がる点も何かの際に役立つものとして、ロックフィッシュゲームを求道してやまないこだわりのあるアングラーは、ぜひともこの点をもインプットしておいてほしい。

 

ショアからハタがこれだけ釣れれば、もう十分なので、この時点で翌日の釣り内容は変更になった。

 

アカハタ、とても魅力的な響きにつき、これから多くの人がアカハタ釣りを始めたり、既存のロックフィッシュアングラーの中でもアカハタを釣りに行く機会を作る場合も出てくることと思いますが、この魚も「ハタ」につき、数釣りするターゲットではありません。

出会えること自体がうれしい、難易度のあがるターゲット。

B

サクラマスやキジハタ同様、「1尾釣れてうれしい魚!」であることを前提として、永く楽しめる釣魚であるように人間側がこの魚に対して、十分な気を配って楽しんでいければと願わずにはいられない魅惑のロックフィッシュ。

 

この釣行の模様は現在発売中の釣り雑誌SALT WATER 2015年9月号(地球丸)内、特別企画「考えるロックフィッシュゲーム・深紅ロック!燃える新魚種 アカハタ編」に詳細が掲載されています。

ソルトウォーター

アカハタは同じハタ科においてもキジハタ以上に高い水温を好む、南方系ロックフィッシュ。

緯度の低い地域ほど釣期が長く、釣れる水深も浅場で狙えるようになっていきます。

逆に緯度の高い地域はその逆になります。

初夏からシーズンの兆しが見え始め、真夏にピークを迎え(まさに今が旬です!)、そのまま水温下がる秋まで楽しめるターゲット。

今回のロケ地、静岡県伊豆半島ではショア・オフショア共に沿岸部の釣りでは水温20℃(以上)を目安として、6月~10月一杯ないし11月上旬頃までがおおよその釣期でしょうか。

ちょうどメバルの良い時期と反対の時期にピークが来るのがご当地の「アカハタとメバルの関係」ということも面白いですよね。

作用している海流が違うところにそれぞれのルーツがあることが分かります。

釣ったことある!という方も、まだアカハタは見たことない!という方も、これからの貴殿のアカハタゲームに些少なりともお役立て頂けるとうれしいです。

詳しくは同誌をご覧ください。

 

タックルデータ

■ベイトタックル(PEライン仕様)

●ロッド:シューティンウェイSWC-802EXHスキップラン

●リール:エクスセンスDC

●ライン:シーガーマルティア2号

●リーダー:シーガーグランドマックスFX 5号

●シンカー:直リグシンカー1oz、クランクシンカーSP 1oz

●クッションビーズ:ロックンビーズソフト

●フック:岩礁メガトンロック2/0、1/0

■ベイトタックル(フロロカーボン仕様)

●ロッド:シューティンウェイSWC-802EXHスキップラン

●リール:クラドHG

●ライン:シーガーR18フロロリミテッド16lb

●シンカー:クランクシンカーSP 1oz

●クッションビーズ:ロックンビーズソフト

●フック:岩礁メガトンロック1/0

■ロングスピンタックル

●ロッド:9ft6in(プロトタイプ)

●リール:AR-C エアロCl4+4000

●ライン:シーガーライトタックルフラッシュⅢ1号

●リーダー:シーガーグランドマックスFX 5号

●シンカー:クランクシンカーSP 1oz

●クッションビーズ:ロックンビーズソフト

●フック:ツイストロック1/0

●ルアー:パワーベイトSW/パワーホッグ4”

     パワーベイト/ダブルホッグ3”

     パワーベイト/パワーバルキーホッグ3”

     ガルプSWダブルウェーブ3”

     カルティバ/ジャスターシャッド3.2”

●フローティングベスト:リトルオーシャン/ロックフィッシュPFD Ⅰ

●ラッシュガード:リトルプレゼンツ/ウェットトップ

●インナータイツ:リトルプレゼンツ/ウェットボトム

●レッグプロテクター:カルティバ/撃投ニープロテクトスパッツ(※ひざガードとして、リトルプレゼンツ/ウェットボトムの上に重ねて着用。)

●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq gaga

●偏光レンズ:TALEXマスターブルー

★静岡県伊豆半島ロックフィッシュゲーム渡船<仁科地区>

龍弘丸(山田船長 )【受付番号0558-52-0814】