ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

緑の季節のー。

今年は動き出すのが遅れてしまったものの、本来であれば震災の翌日から今シーズンのサクラマス通いを始める予定で、北上川へ行くことにしていた。

例年、北上川水系下流域のサクラマスは1月に解禁され2月~5月が主期で、3月~4月は魚影が一段と濃くなる最盛期。全国各地から多くのトラウティストが一堂に集う季節です。

 

あの日から3ヶ月が過ぎた先日―。

私も新たな決意と勇気を胸に、再び水辺に立った。

東北屈指の大河・北上川の流れロッドを手にすると、人間、なんだか前向きになれるような気がしてくるから不思議なもんだ。

これまでの釣り人生、6月になってシーズン“初めて”のサクラマス釣行など、まずなかったし「思いもしなかった」というのが本音。

雪の舞う、2月の北上川。

“パキパキ”と乾いた音を立てながら、枯草の茂みを進んで行く。

厳寒のなか川辺に立ち、少し経つと、「あれっ?」と小さな異変に気づくんだ。

見るとガイドとラインが凍りついている。

……これが私の、いつものサクラマスの釣り。

骨身に染みる寒風もなんのその、自転車でフィールドに通っていた少年時代から追い続けてきたこの釣りは、年齢を重ねるにつれ益々その奥深さに感化され、そしてその難しさに真っ向から立ち向かうようになっていた。思えば、魚種別釣行日数でもロックフィッシュと同等、あるいはそれ以上に足繁く通うのもサクラマスの釣りだろう。

今年も。憧れの彼女に会うために―。

釣りを再開したこの日、初夏の陽射しを浴びながら出会った“緑の季節のサクラマス”に、ちょっとだけ違和感を覚えつつも、久々の手応えに手が震え出したのを自分でも気がついて、なんだか吹き出しそうになる。

幸いなことに俺の「魚運」は、まだ健在なようだった。

チャートバックのミノーを流芯に送り込み、ヒラを打たせた瞬間の出来事。

 62cm。1年振りの再開に思わず、手が震えてしまった。

 

 

 

 

 

 

6月もそろそろ後半に差し掛かる時期ながら、まだ多くの魚が下流域には残留している。

季節柄、遡上してきたシーバス達も華を添え、もう少しの間、私達に夢を与え続けてくれることだろう。

山と海をロマンで繋ぐ、奇跡の魚。

彼女の名は、「本流の女王」サクラマス。