ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

アザラシ遊ぶ、夢の島。~紫色の魚影を想い求めて~

ロングスピン釣方で遥か沖から魚を手繰り寄せる。

ベイトタックルでは届かない遥か遠方にいる魚を獲る、ロングスピンで軽快にアイナメを抜き上げる。

9ft6inのヒラメロッドに3000番以上のスピニングリール、1号前後のPEラインにフロロカーボン20lbリーダーがそのタックル。

今後の釣りにおいて、アングラーに1尾でも多くの、1尾でも思い出に残る【魚との出会い】をもたらす釣り方の一つ。

そんな釣り方もまた必要に迫られた一年だった。

 

 

 

さて、2013年度もいよいよ本日で最後。

 

思い越せば昨年(2012年)の大晦日も同じような日取りだった……。

アシェット・コレクションズ・ジャパン「日本の魚釣り」の物撮り撮影に取り組み、終わったのは既に夕方の迫る時間に。

翌・1月1日は一年の疲れがどっと出たのか終日、寝正月。ぐったり、のんびりで家から一歩も出ませんでした。

続く1月2日は午前中から、つり人社「Basser」のロックフィッシュゲームにおけるPEラインの記事の原稿執筆。午後イチまでに原稿を終わらせ、30歳という節目におこなわれた中学時代の学校全体の同窓会に夕方から慌ただしく出席。

その翌日から風邪をひき高熱のため4日間寝込み、年末年始の休暇があったのか…なかったのか…覚えていないという……。

 

その一年後の今年。

現在抱えている雑誌の原稿作業・校正作業と新年早々にまたロケに出発予定。

今回も休めるのは元旦の明日くらい(?)なのか、それとも正月三が日を無事に休めるのか、の狭間です。

 

そんな今年も振り返れば思い出と同時にやり逃したこと、やり切れなかったことは沢山ある年になりました。

 

それでも全部、追っかけてしまうとキリがないので自分の体力と気力の維持出来る範囲で「線引き」はかけるようにしていますが、その中でも大きなのは二つ。

 

BS日テレ「夢釣行」の番組ロケで訪れた北海道厚岸の大黒島。

厚岸湾に浮かぶ大黒島

霧のベールに包まれた大黒島と小島を海の向こうに臨む。

番組をご覧頂いた方ならご存知のように磯に寝そべるアザラシの横で、サラシにルアーを撃ち込む釣り師の姿がそこに記録されている。

 

鳥獣保護区につき、釣り目的での島への上陸は出来ないためボートからここの磯を撃った。

「ウサギアイナメの磯撃ち」はロックフィッシャーの自分にとって、いつしかの夢の釣りだった。

単純にウサギアイナメを釣るのではなく、「磯」というシチュエーションと「ウサギアイナメ」という魚を双方リンクさせて釣りをしたかったのが、自分の理想とする前々からの実現させたかった夢の釣り。

訪れた興奮沸き立つ舞台で、私は意外な現実に直面することとなった。

なんと、魚は1尾も姿を見せてはくれなかったのだ。

 

原因は色々考えられるが、現実問題として「釣れなかったこと」に余計に火がついた自分がいた。

夢を追いかけた地に、私はもう一度の夢を置いてきた。

 

だから、また行かなくてはならないキッカケが出来る。

そう、その夢を“取り戻す”ために。

 

一度来たから「満足!はい、終わり。」ではなく、もう一度ここに来たい海がそこにある。

Dream&Passion.

そんな海があればあるほど、釣り人の夢と情熱は尽きない。

 

 ウサギアイナメ。

オスのウサギアイナメ

印象的な色彩を誇る、オスのウサギアイナメ。

 

メスのウサギアイナメ

対して、控えめな体色もまた美しいメスのウサギアイナメ。

 

この魚を初めて知ったのが16歳だった私―。

それ以来、高校時代からずっとずっと憧れ続けてきた紫色のアイナメがウサギアイナメで、その魚が住む島は、来年もまた再訪したいと想える“夢の島”として現31歳の己の視線の向こうに、海の向こうに、存在している。

かつての少年は、いい歳をした大人になったが、その志は当時と変わらない。

だから、今もやり続けられる。

 

そんな事実があっていい。

今は、そう思えています。

 

又、今年下半期と言えば、キジハタもこれからの未来がある魚だ。

これからの未来が問われるキジハタ

雑誌ロケで行った新潟県やテレビロケで行った香川県でもキジハタは一目置かれる貴重な釣魚。

でも、その与えられた未来を生かすも殺すも、釣り人の手に委ねられているのもまた事実だろう。

キジハタはアイナメのように数が釣れる魚ではない。メインが夜釣りとなる部分でも釣りとしての制約は大きい部分だ。

もともとの数がそう多くはない魚を本格的に「釣りの対象魚」にする難しさにこれからのロックフィッシュ業界は多く直面していくこととなりそうだが、それだけに魚と向き合うスタンスが今以上に問われる魚ではないだろうか。

東日本大震災の起こる前、たびたび車で長時間かけて北陸の石川県や富山県に通いこの魚を追い求めてきた経緯から、震災後の今ふたたびキジハタフィールドに立つ喜びはまた新鮮に感じる。

 

さて―。

2013年を締めくくるお別れの写真は宮城県石巻湾に沈みゆく夕陽です。

2013年、本当におつかれさまでした。また来年も素晴らしき海でありますように。

大変な事が起きてしまったけれど、本当は、いい海なんですよ。

 

魚咲く海の、“サカナサク、海の旅。”の話。

かつて豊かな漁場だった海は、大震災を経ても尚、生き物達に溢れる海を少しずつ取り戻そうとしている最中。

辛い想いも、悲しい想いも一言ではあらわせぬこの海は、それでも変わらないこの場所は、例え時代の流れは移り変わろうとも己の心の故郷でもあるのです。

 

 

今年一年、皆様本当に大変おつかれさまでした。

来たる新しい年がよき一年となりますように。

どうか良いお年をお迎えくださいね。