桜、花旅。~サクラマスの話~(2)
宮城県北上川―。
前回に続く釣行(2013年4月)。
この日もまた期待を胸に川辺に立つ。
4月の中旬、咲いた桜の花も満開だ。
早朝から川に立つが、朝マズメはもとより午前中の釣りは不発に終わる。
サクラマス釣りでは当たり前に過ぎる時間だ。とは言え、シーズン的に考えて魚は確実にいる。
場所と時間を合わせて、マスの口元にルアーを運べば、そこにいるはずの複数尾のうち1尾くらいは反応を示すはず。
だから、決して諦めてはいけない。
遡上魚を狙う釣りは、まさに一期一会。
余程の偶然が重ならない限り、その都度、同じ魚との出会いはないわけだから、今この瞬間を大切に釣りに挑む姿勢が望まれるのもまたサクラマスの釣りだろう。
午後、ポイントを下流側に移動し心機一転を図る。
通常、北上川水系のサクラマス釣りでは私の場合は釣り場に2セットのタックルを持ちこんでいる。
1本目は9フィートのロッドにPE1号のタックルでこちらはスプーンを筆頭に、メタルバイブから通常のバイブレーションプラグまでの重量級ルアーを振り切るためのもの。
2本目は8フィート3インチのロッドにPE0.8号のミノー用のタックル。さすがに9フィートロッドでミノーを小刻みに動かすとなると腕~肩に負荷が掛かるので、この場合には飛距離を落としたとしても操作性重視のショートレングスが使いやすい。
又、9フィートロッドではオーバーヘッドキャストがしにくい狭い空間での釣りでもこの長さのロッドは重宝する。
つまりポイントのオープン度(開け具合)と使うルアーの動かし方によって、上記2つのタックルを使い分けている。
このポイントでは周囲が少し閉鎖空間ということもあり、9フィートロッドでは取り回しが悪いため、8フィート3インチのロッドに持ち替えてキャストする。当時、こちらのロッドにはPE0.8号を巻いたリールがセットされていた。
流れが効いているので、ミノーを投じると思いのほか早くトレースゾーンを泳ぎ切ってしまうため、少しでもゆっくりとルアーを通すために水の抵抗を受けやすい幅広タイプの18gスプーンに付け替えた。
川底のストラクチャーと時折、コンタクトするように引く。引き方は例によってスピナーベイトのスローローリングのように。
その時に魚はヒットした。特有の首振りがロッドの穂先を叩き、大きなマスの暴れ具合が伝わってくる。
隣で小休止していた同行者の井上さんに「来ましたよ~」と一声かけたタイミングで下流に向かって魚が走り出し、ドラグが出ていく。その過程で川底の何か障害物にラインが触れながらドラグが作動している感触があった。
リーダーはフロロカーボン20lb。私の愛用するクレハ製のフロロ(シーガーショックリーダープレミアムマックス)はお世辞抜きに強靭なので、60センチ前後のマスの引きでラインそのものが引きちぎられる心配はない。でも、具合が悪いのはPEライン、そう、メインラインの方だ。
PEラインは障害物に何も干渉しない状態での直線での引っ張り強度にはケタ違いに優れる反面、硬い物に対する擦れには著しく弱い。そのあたりはナイロンやフロロカーボンよりも心配だ。
ザクザクと擦れが伝わるメインラインPE0.8号にとって、そのファイトは限界に達した。サクラマス釣り人生、初めてのファイト中のラインブレイク。
サイズもそれ相応だと思えるものだったが、第一に魚を掛けた位置が悪かった…。
この一部始終の様子に、隣で見ていた小休止中の井上さんの中に火が灯ったようで、再び竿を振り出すと5分としないうちに隣で本命をヒット。
私はランディングサポートに回る。
彼の手にシーズン4尾目のサクラマスが横たわる。
サクラマス釣りは喜びを共有しあえるのも魅力だ。
「魚は確実にまだいる」と確信した私はタックルを交換し、擦れ対策でPE1号が巻いてある9フィートロッドに持ち替えた。
長さゆえに草木の込み入ったポイントでは投げにくいのが少しの難点だが、ここは掛けた魚を強引にでも寄せてくるためにタックルパワーもアップした。
ただし、魚を獲る戦略はラインの号数アップとロッドの強化だけではなく、ルアーにも注いだ。
ルアーは18gスプーンから同じ銘柄の15gへと重さを逆に下げたのだ。
これによりフォーリングスピードが落ちるので、川底にあるストラクチャーまでルアーが到達する前にフォールの最中に魚に喰えさせる目的のためである。
そうすることで少しでも上のレンジでヒットさせてすぐさま引っ張り上げてしまえば川底にどんなストラクチャーがあろうが、ラインの擦れでのブレイクは極力避けられるからだ。
その作戦は見事的中した。魚を逃した悔しさは次の向上心へ繋がる。
ヒラヒラを舞い落ちる15gスプーンのフォール中にサクラマスは再び私のルアーを急襲した。
フォール中のアタリを取ることには長年のロックフィッシュゲームで長けている。要は、ジグヘッドワームのフォーリングの釣りを今はスプーンでやっているだけ、なのだ。
今度は逃がさない。ラインもPE1号という安心感は心強い。
しばしの攻防の末、高鳴る興奮は完結した。
安堵の瞬間だった。
軽く“じゃれる”ようなバイトも絡め取るように、長年の経験から割り出したお手製フックが確実に大鱒の口腔を捉えていた。
「釣れない釣り」もサクラマス釣りならば、時に「釣れる釣り」もまたサクラマス釣りなのだ。
予想が確信に満ちた時、この釣りは最高にエキサイティングな釣りへと変貌する。
そのギャップもまた釣趣を高めるエッセンス。
前回に続く幸運を手に、次の釣行も更なる高みを目指す。
■タックルデータ(2013年4月)
●ロッド:シードライバーNSDS-90ML-PW
●リール:ステラ4000
●ライン:シーガーライトタックルフラッシュⅢ1号
●リーダー:シーガーショックリーダープレミアムマックス20lb
●スナップ:カルティバ/クイックスナップ2号
●ルアー:テッペンスプーン15g
●フック:オーナーばり/OH丸せいご22号をベースにした自作シングルフック。ループ部の組糸にオーナーばり/ザイト・パワーフレックス50lb、根巻き糸にはオーナーばり/テクノーラ根巻糸を使用。
●ヘッドウェア:カルティバ/ダメージドカルティバメッシュキャップ
●ジャケット:カルティバ/ゲームジャケット2
●偏光グラス:ZEAL OPTICS/Vanq
●偏光レンズ:TALEXトゥルービュースポーツ(シルバーミラー仕様)
2014年4月11日 | カテゴリー:釣行記