この手に掴む、春の兆し。
喧騒とする時間の合間を縫って、本格的な春の訪れが間もない川辺に立つ。
まだ眠る、東北は北上の大河。
夜明けは、もうすぐだ。
そうだ!
少し早い朝食をいただこう。
コンビニのおにぎりにインスタントの味噌汁。
簡素だが、自然の時間の中で頂く食べ物はみなご馳走だ。
お湯を入れたポットをこの時期の釣りでは携行しているのだが、朝冷えの身体に温かさが行き渡る。
そう、まるで身体が蘇るようだ。
釣りが出来る時間には限りがあるから、「今」というこの時間は尚のこと大事にしたい。
今年もどうか釣れますように―。
そう願って放ったミノーを水の底で銀光が襲った。
「来た!」
けたたましいドラグの音が静かな川面に響き渡る。
不意のジャンプをかわし、いなしに掛かるが、魚が思いのほか重いので相応の相手だと悟ればそのやり取りは一層と緊迫を見せる。
その重量は、3.5キロ強もある厚みあるものだった。
9センチのディープダイバー。
フックは、こだわりの赤針(ST-46RD)だ。
海からやってくる、春の恵み。
山の命を海に運び、そしてまた桜の季節に大海から舞い戻るそれは「川」と「海」の使者に他ならない。
毎年欠かさないこの瞬間のために今年もまた川に、海に、立つのであろう。
サクラマス。
この手に掴む、春の兆し。
この春もどうか幸せだと思える瞬間が皆さんにもありますように。
2015年4月7日 | カテゴリー:釣行記