ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

静寂な早朝の水面に、銀影が舞う。

真夏の夕暮れ、涼を兼ねて竿を振るのも乙なものだが、人より早起きして朝日を浴びながらの釣りも清々しいものだ。

この日はいつもとは趣向を変え、夜明けと同時に北上川へシーバスを狙いに行ってみる。

例年、北上川のシーバスは今時期は朝8時を過ぎると釣れないことはないものの、高気温のなか時間と体力を費やした割にはそれほどの釣果は期待出来なくなってしまう季節柄、予め時間を絞って早朝と日没後の時間に狙いを定めた方が効率がよい。当日も朝4時~7時までの3時間の釣行。

フックを外す際、口の中からは捕食済のボラの仔が沢山入っていた。「今日はこの辺をやってみようか」と川辺に立つとボラの仔を追う、シーバスのボイルが随所に見られた。岸際は水深60cm~1m足らずと浅いが、ボラの仔を際ギリギリまで追い込んで「ガボガボ」やっている。

 

北上川水系では70cm以上、とりわけ80cm~90cmを超す大型ともなれば、岸際の足元付近まではそうそう接岸してこない。余程、大量にベイトフィッシュが接岸し、かつ最適な流れが効いてない限りは、特にデイゲームではその傾向が顕著だ。どうしてもデカいのは沖目の流芯の中層以深でのヒットに集中しがち。よって飛距離も最低40m~50m以上は投げたい。

そのため、ミノーよりも遠投が効き、更に深場を通せる1ozクラスのバイブレーションプラグが圧倒的に好まれるのが、この水系の特徴でもある。ただし、40~50cmクラスのアベレージサイズ、せいぜい60cm台までであれば状況と時合によっては岸近くの上層まで魚が回って来るので、ライトタックルで存分に楽しむことが出来る。

朝一、川をパッと見た途端、すぐに車まで戻る。黙々と一発大型狙いに徹するもいいが、先に記した状況なら“それに応じた釣り方”もある、と考えたからだ。

と、いうのもタックルケースの中には常備しているミノーとバイブレーション、シンキングペンシルしか入っていなかったため、ペンシルベイトとポッパー、スイッシャーを補充して戻る。

東北の夏の川はシーバスも高活性。水面では相変わらず、激しい飛沫があちらこちらで上がり、あまりの興奮状態にシーバスが水面から勢いよく飛び出しながらボラの仔を捕食している。サイズはいずれもフッコ級と大きくはないが、その数は相当なもの。ご周知のように私の場合、実釣中は偏光グラスを欠かさず着用しているが、これだけの魚数が水面付近に集結していると偏光レンズ超しにシーバスがボラの仔を襲う瞬間が容易に見て取れるから、視覚的にも更に状況判断しやすくなる。

人影で魚を驚かせないように、岸際から少し離れたところから、1投目はペンシルベイトをキャスト。着水後、「チョン、チョン、チョン」とラインスラッグを操作しドッグウォーク・アクションをかける。

ルアーが岸際付近に差し掛かったころ、足元のブレイク下から「バシャーン!!」と派手な水飛沫が上がった。

狙い通り。ベイトフィッシュを飽食している魚群はサイズの割に引きが強い。フックを外す際、口の中からは捕食したボラの仔が2匹、3匹とそのまま入った状態にも関わらず、ルアーに次々にヒットしてくるのだから、どれだけ活性が高いかお分かり頂けるだろう。

心地よい横っ走りを味わいながら、バタバタと連発モードで釣れ続く。

2~3投に1尾はヒットする、まさに入れ食い状態をしばし堪能させてもらった。岸際はペンシルベイトで、少し沖に投げると水深が深くなるので魚を下から寄せる意味で使ったポッパーも良かった。淡水のバスとは異なり、動きの俊敏性により優れる海のフィッシュイーターを狙う時、ポッパーの場合はスプラッシュ(泡)のトンネルを作り、ルアーがその中に常に入っているようにすると見切られにくい。これはシーバスのみならず、オフショアのシイラや南海のGTの釣りにも通じること。それからペンシルベイトの動きに魚がやや警戒するようになってきたら、スイッシャーの出番。シーバスの世界ではあまり馴染みの薄いスイッシャーであるが、水面を意識しているフィッシュイーターを引き付ける能力は非常に高いルアーの一つと言えよう。ロッドのストロークを上手に使い、リッピングしながらルアーが浮上する際にペラが終始回り続けているように完全にテンションを抜かないように意識的にアクションを入れると、その最中に一撃で魚が引ったくっていく。

上:当日最も反応の良かったペンシルベイトと、ヒットしたシーバスが吐き出したボラの仔。まさにマッチ・ザ・ベイト。このように夜明け早々の短時間(夜明け後1時間が勝負!)ながら、とても良い釣りに恵まれたが朝6時になる頃にはシーバスの反応が急激に薄れていき、7時前には「シーン……」と完全沈黙するまでに至った。

 

先程までは、あれだけいたシーバスの群れが岸際から離れたのだ。ちょっとの時間でこれだけに差が出るから、状況の移り変わりは実にめまぐるしい。

こうなると北上川水系の定番的釣り方であるバイブレーション大遠投&底引きが有利になってくるが、本日は十分過ぎる釣果に早々に納竿。

“朝メシ前”に楽しめる今、ホットな釣り。

生粋のシーバスアングラーの方は勿論ですが、「シーバスをトップで釣ってみたい!」という方にもオススメです。

【朝起きは三文の徳】なり。

 

 ■タックルデータ

●ロッド:ソルティーステージ・シーバスSSS-902L

●リール:ステラ4000S

●ライン:バトルシーバスPE0.8号

●リーダー:ショックリーダープレミアムマックス20lb

●フック:ST-46、ST-47TG

●ルアー:ドッグ-X  SW、R.A.ポップ、バングオー

●偏光グラス:ZEAL OPTICS ヴァンク

●偏光レンズ:TALEX イーズグリーン