例のキジハタが宮城県石巻魚市場に水揚げされた件
遡ること、それは新幹線車内で移動中の9月20日の朝のことでした。
宮城県の友人から、「今朝、石巻魚市場では珍しいキジハタが水揚げされた」という写真付きのメールを受信しました。
仕事の関係で市場に出入りしているため、見つけたその場で撮ったという写真。
こちらです。
アイナメと一緒に水揚げされたキジハタが1尾。
このキジハタは金華山方面の網で獲れたそうです。
金華山とは宮城県牡鹿半島の沖合いにある島のことです。
近年、温暖化の影響もあってかハタの北上は全国的な傾向になっています。
以前、この綴りでも紹介したことのある事例としては北海道寿都の網にキジハタが入り、生体は小樽市の小樽水族館で展示されたことは、ちょっとしたニュースにもなりました。
寿都は「すっつ」と読みます。(※道外の方へ。)
それもそのはず、北海道で生きたキジハタが捕獲されたのですからー。
日本海側では今や青森県の青森市でもキジハタが釣れることも珍しいことではなくなってきたという現代、海峡を越えようとするキジハタが出てきたことを物語る出来事としても記憶に新しいものでした。
これはキジハタのみならず、オオモンハタでもこういった傾向は顕著ですし、全国的にはブリ・ヒラマサ・マダイの回遊ルートはより高緯度へも進みつつあることは周知の事実。
新しい生息地を築こうと南方系の魚は、確実に北を目指し進出しているのです。
数年前には神奈川県の大黒埠頭で釣れたというキジハタのニュースも聞きました。スズキ狙いのエサ釣りで夜に釣れたとか。
関東近郊ではなかなかキジハタはあがらないので当時とても珍しいお話でしたが、それだけでは終わらずー。
こちらの話題も遡ること数年前。震災後のお話ですが、マガレイの好釣場としても知られる宮城県仙台湾でカレイの船釣り中にキジハタが釣りあげられたというお話も当時聞きました。
カレイ釣り中に釣れたということはエサはアオイソメの仕掛けに掛かったのかもしれません。
そして昨年は同じく宮城県内は石巻市雄勝地区の網にキジハタがかかるという事例が。
なので宮城県内では昨年もキジハタは獲れている(漁師の網にごく稀に入ることがある)ので、「またいつかキジハタの話は出るかもしれないなぁ~」とは思っていたのですが、今年は9月20日の朝に同県金華山方面で漁師の網でキジハタが捕獲され市場に水揚げ、となりました。
場合によっては、釣りをしていればいずれまた三陸方面の海でも誰かの釣り針にキジハタが掛かる可能性もあるわけですし、きっとそうなれば釣った人はその存在を知っていればきっとビックリするかもしれませんが、時代はそうなってきている、ということだけは確かなことかとー。
逆の見方をすれば、それだけハタは「動き回る根魚」ということであり、従来型ロックフィッシュゲームでの主であるアイナメ、ソイ、カサゴ、カジカ、メバルとは習性が異なるタイプの根魚グループであるということも大きく物語るものです。
例えばカサゴ生息地の北限としては太平洋側では旧来、福島県小名浜が有名でした。
年々、世界的に海水温の上昇が叫ばれるなかで暖流の勢いが強くなりマダイやヒラマサの北上も盛んになってきて、もし真っ先に東北地方太平洋側で新しい根魚が姿を現すとすれば、もともとの北限が小名浜近郊にあったカサゴが福島県南部やその隣の県である宮城県でまとまって獲れるようになるはずなのですが、現状では今もそういった事例は聞きません。
それだけカサゴの場合には生活史としての行動範囲が狭く、決まった範囲の場所で終生の生息圏を形成している根魚ということです。
対してハタは真逆で、エサがあって水温が適しているならば自分から行けるところまではどんどん泳いで行ってしまうタイプの根魚が多いということ。
特にキジハタやキジハタ以上の遊泳力を持つオオモンハタはテリトリー型ロックフィッシュとの釣り方の違いが明確になってきてそれがこのカテゴリーにおいても今までになかった新しい釣法をもたらしたことで、現在では釣りシーンでも注目の的になりました。
他にもバラハタやスジアラなんかも泳ぎまわるタイプのハタですよね。
スジアラの場合にはこの魚の本場でもある沖縄県ではアカジンとかアカジンミーバイという呼称でやはり高級魚として現地では扱われていますが、暖流に乗って泳いでくるので和歌山県あたりでもスジアラの釣果はときどき耳にすることがあります。
それから、やはり和歌山県でのお話ですがご当地ではアザハタが増えているというドキュメントを今年の2月か3月くらいにNHKの番組で水中映像で放送していました。
本来、もっと南方系であるアザハタが和歌山県の海に住み着き、それがここ数年でその数が増えていると南紀で潜るダイバーさんが語っていました。
まだメジャーな釣り魚とはなっていないため、アザハタを知っているロックフィッシュアングラーは少ないかもしれませんが、この魚もアカハタ同様に凄く鮮やかな赤いハタで超かっこいい魚。
アカハタよりも大きくなるので、きっと釣ったら凄い手ごたえと惚れ惚れする美しさを放つハタであることは間違いないでしょう。
もし興味があればアザハタ、調べてみて下さいね。
いずれにしても、それだけハタは回遊性を持っているんです。
そうなると、暖流による適水温の拡大はその土地に新しい回遊魚を招き寄せる効力を示します。
その一例がこのキジハタにも該当し、近年では日本海側でも太平洋側でもキジハタの北上が人目につくようになってきた、ということなのでしょう。
私がキジハタを本格的にロックターゲットとして強く意識して狙い始め出したのは2006年の夏でした。
キジハタを初めてこの手にしたのは、釣り雑誌のロケで行った富山県がその最初。はじめからキジハタを専門に狙いに行った取材でした。
夜行性のキジハタ、夜は遅い時間まで撮影し、ホテルに戻って2、3時間仮眠してまた夜明け前から朝マズメにかけて撮影という時間枠をやってのけたのも今ではとてもなつかしい思い出です。
私は東北地方太平洋側在住ですが、その頃、キジハタを専門に釣りたくてキジハタのいる地までわざわざ出向く人は極めて少なかったと記憶しています。昔から根魚釣りが有名な愛知県名古屋の方々がキジハタが有望な沖堤目当てで夏場の富山湾に時々遠征してくることはありましたが、東北から北陸へキジハタ狙いで…という私のようなケースは極めて稀。少なくとも私の周囲にはそんな同志は誰もいませんでした。
なので、釣り仲間には「物好きだね~。わざわざそんな遠くまで!? 大きな根魚だったら…地元でアイナメとかベッコウゾイとか釣れるでしょう。」とー。
でも私の目的はただ単純に大きな根魚を釣ることではなくって、いち魚種としての「キジハタ」をきちんとターゲットとして認識されるようにこの釣りをクリエイトしたい、この釣りを覚えたい動機でした。
なにせ、キジハタがロックフィッシュゲームの対象魚としての認識を持つ人はまだいなく(少なく)、専門ターゲット化される前の時代ということもあります。
狙える地域のごく一部で、ご当地ターゲットとして一部の愛好家の間で最近ちょっと流行ってきたかな?という時代です。
でも、この魚を知れば知るほど、ゲームフィッシュとしてはあまりにも好都合な魚でいつかロックフィッシュゲームの筆頭格として表れる時代は来ると思ったものです。生息地もアイナメ、ソイよりも遥かに広いため、ロックフィッシュゲームとしてのジャンルを明確な市場として確立するためには全国ウケするのはいずれはこの魚の力なくしては…という気もしていました。
私は新潟県、富山県、石川県までキジハタを探しに行っていましたが、時には片道8時間や10時間の車の運転も繰り返しました。
20代という若さゆえの有り余る体力でカバー出来たこともありますが、ひたすら遠かったです(笑)。
釣れる場所も知りませんので、マップから条件を割り出してワームを投げていく繰り返しです。
でも、それが面白かった!
昨今のように開示された情報も少な過ぎるし、専門に狙う釣り人も少なかったので、今の時代のくらい1尾のキジハタにたどり着くことはそう簡単なことではなかったのですが(今でも難しいことは難しいですが)、それでも出会えたときはアイナメやソイともまた異なる喜びを感じたものです。
世間では高級魚扱いですし、釣りの世界でもレアな魚でしたので、喜びも特別に大きかった。
10年前の当時と今ではキジハタ釣りを取り巻く環境や状況もまた大きく変わってきていますが、今も昔も相変わらずロックフィッシュアングラーにとってはキジハタは憧れの根魚の1つでもありますから、その注目度は極めて高いものです。
北と南の海で起こっている海流の作用の変化。
これが吉なのか、凶なのか、は私たち釣り人視点でそのすべてを語りつくされるものではないですが、我々の親しみある存在である「海」で、今、実際に起こり得ている事例としてその動向には今後も注視していきたい話題のひとつでした。
本日の綴りは写真1点文章多めでお送りしましたが、この1枚の写真から考えさせられることは大変多いものです。
皆さんにとっても、何かの一考になればと思います。
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2016年10月12日 | カテゴリー:その他