北上の大河に日没が迫るとき。
「釣りは最後の最後の瞬間まで何が起こるか分からない」とは昔からよく言われた話である。
夜明け直後の最初の1投から、迫る日没間際の最後の1投までが全部釣りなのだ。
魚にとって、私達・人間の都合などまったくもって関係のないことだから、人が言う“時合”と魚が“その気”になった時合は、いつも必ずしも一致するものばかりとは限らない。
北上川水系下流域に今日もまた日没が迫ろうとしていた。
辺りは薄暗くなり、そろそろ撤収しなければと思いながらも、この1投で最後に掛かるかもしれないと期待していた時、“クッ”と鋭く、ロッドティップが突然入り込んだ。すかさず、手首を返すようにフッキングを打ち込む。続けて2回追い合わせで本アワセをサポートした。流れは下流に効いている。相手は案の定、下流側に猛突進していった。
ふと静かになりかけた川辺に、ドラグの音色が鳴り響く。
この魚も、いいサイズだ。
まさに緊張の一瞬。この魚を掛ける前にもヒットさせたのだが、ランディング体制に入ろうとして魚を水面に出した瞬間に激しくローリングされバラしてしまっていた。この時はどうしようもない悔しさは不思議と湧いてこなかったが、それでも少々拍子抜けしてしまった感は残っていた。
でも、次は絶対に逃がしてなるものか―。
ここは釣り人と魚との“意地の真剣勝負”だ。
最後の最後まで激しく抵抗をした相手をなだめ、無事にランディングネットに収めた。この数投前、若干針先が甘くなっていたフックを新しいものに交換したのが効いたようだ。
針1本で釣果は変わる。これは間違いない。
サクラマスのように1尾、1尾が非常に貴重となる魚を相手にする釣りを長らく続けているとフック、つまり釣り針に対する注意力は確実に増す。
なにせ、水中で魚と最初に接する釣り道具は針なのだから。
日没が迫った川辺に咲いた、一輪の夕桜。
うれしさもさることながら、迫る暗闇を気にしつつテキパキと道具を後片付けする。
なんとなく、報われた気分になった(笑)。さぁ、潔く帰ろう。次の1投はなしで―。
翌日もまた朝の1投から夕方の最後の1投まで多くのトラウティスト達が川辺に立つのだろう。
その想いは釣り人たるもの誰もが願う「サクラマスを釣りたい」という、ただ一つのシンプルなもの。
今年は「全国的にサクラマスが釣れていない部類に入る年だ」という話を先日耳にした。
それでも4月に入ってからは、だいぶ釣果も上向きになっている北上川水系下流域。
その今も昔も変わらないポテンシャルを秘める母なる川の恵みに、今宵も酔いしれると同時に心から感謝を贈ろう。
■タックルデータ
●ロッド:トラウティンマーキスボロン TMBS-832M
●リール:ステラ4000
●ライン:シーガーR18完全シーバス0.8号
●リーダー:シーガーショックリーダープレミアムマックス20lb
●フック
★スプーン用:OH丸セイゴ22号をベースにした自作シングルフック
★プラグ用:ST36BC、ST36RD、ST46RDの♯6~♯4
●ルアー:オリジナルスプーン、テッペンスプーン18g
バッハスペシャル18g、トビス20g
シュガー2/3ディープSG92F
シュガーミノーSG90F
ファリーナ90F(サスペンドチューン仕様)
ディープフィート90MD(サスペンドチューン仕様)
ビットストリーム90FMD
●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq
●偏光レンズ:TALEXイーズグリーン
2012年4月26日 | カテゴリー:釣行記