BS日テレ「夢釣行」ロケ・北海道積丹半島アイナメ編
先日、放映されたBS日テレ「夢釣行~一魚一会の旅~ 東北魂の志 北のロックフィッシュに根魚ハンターの夢を追う!」をご覧頂きました皆様には改めて感謝御礼申し上げます。
アイヌの言葉で「神」を意味する、カムイ(神威)岬を中心とする積丹半島の蒼い海、素晴らしいロケーションは、“絶景”の一言に尽きる。
今回、ロケの舞台となった沼前岬での実釣をはじめ“北海道遺産の地”でもあるこの海の魅力が釣りを通じて、より鮮明に伝わってくれたならば私も幸いの限りである。
ロケを行なった5月中旬は道央圏にもまだ残雪が見られ、東北では既に時期が過ぎた桜の花を道内でもう一度目に出来た時は、なんだか得をした気分になれた。
北国の春は遅い。だからこそ、その瞬間を待ちわび有難味をより噛みしめることが出来るのではないだろうか―。
私が訪れた5月中旬は積丹半島は磯やゴロタ場、サーフなどから海で釣るサクラマス、つまり“海サクラ”がちょうど最盛期を迎えている時期で、本来ならば水温の関係上、完全なるアイナメ狙いにはまだ少し時期が早かったのも承知のうえだったが、きっと今頃は同地のロックフィッシュゲームも最盛期に差し掛かっていることだろう。
事実、このロケ中にはテキサスリグを回収する際に後ろから数匹の海アメ(海に降海したアメマス)がワームについてきたり、自分がテキサスリグを操る立ち位置から100mちょっと離れた、沖の潮目付近ではオオナゴ・コウナゴを追うサクラマスのボイルが起こり、海の中は水温的に考えてもアイナメというよりはマス族の勢力の方が強い印象を受けた。
私はロックフィッシュと並行して北国の大型マス族も好きな釣りゆえ、むしろ春という季節柄、こちらの方が個人的に釣りたいかな…と一瞬考えていたのを番組ディレクターに見透かされたようで、ロケ中、テキサスリグを根際に運ぶ一方で「佐藤さん、目が遠くのほう(遥か沖でボイルする海サクラの群れ)にいってますよ~。(ニヤリ)」とバレてしまっていたようだ(笑)。
いくらアイナメに狙いを定めているとはいえ、眼中にベイトフィッシュを追うギンピカのサクラマス達が時にバシャバシャ飛び跳ねているのを目撃してしまえば「あれ、ロングロッドでジグを遠投したら一発で喰うよ!」と何回思ったことか…。
北海道は日本屈指の“マスと根魚の王国”である。これは紛れもない事実。それだけに日本という国において生粋のトラウトアングラーとロックフィッシュアングラーにとっては、まさに最後の夢はここにある、と言っても過言ではないだろう。
圧倒的な土地面積を誇る北海道はそのフィールド規模も実に果てしなく、道内在住者とはいえ釣りながら道内を全て回りきることは決して容易なことではない。
よって、“北海道を釣り歩く”ということは本州在住の方が都内・府内・県内の釣り場を広く釣り歩く感覚とはそもそもの規模が異なってくる。
北海道という土地は、アイナメとクロソイに焦点を宛てただけでも実はかなり面白い特徴がある。もともと道内ではアイナメなら太平洋側、クロソイなら日本海側と言われる通り、北海道の太平洋側はどうしてもボトムが砂泥ゆえに水の透明度もそれほど高くはなく、むしろ慢性的に濁った海域が多いが、ここで釣れるアイナメはサイズも数も日本海側を凌駕しているから不思議だ。
対して日本海側でロックフィッシュと言えば、アイナメの比率が少なく、圧倒的にソイ類とエゾメバル(ガヤ)が主体になってくる。
そう、北海道の日本海側は太平洋側ほどアイナメの魚影が濃くなく、釣れるアベレージサイズもどういうわけか小さめなのだ。この辺は東北地方でも同様のことが言え、ひとくくりに東北と言っても岩手・宮城といった太平洋側と秋田・山形の日本海側でのロックフィッシュ文化の違い、認識の違いが異なる点も共通しているのではなかろうか。
日本地図が示している通り、北海道の太平洋側はその大部分が砂地ベースであり、宮城県や岩手県、つまり複雑に地形が入り組んでいる“三陸リアス式海岸の続き”の環境がそのまま北の北海道にあるというわけではない。下北半島を過ぎ、津軽海峡を渡ればその考えは改めなくてはならない。道内の太平洋側には磯場が少なく、それも局地的で、その代りに人工的に造られた沖堤や離岸堤、地続きの堤防がアイナメ達の主な住処となる。そういう観点から見てもアイナメという魚種に関しては、日本海側より太平洋側の海を好む性質が顕著であることが分かる。
その一方で、日本海側はソイ類が豊富で、たいがいクロソイの60cm前後の大型は太平洋側よりも日本海側で釣り上げられることが割合として多い。シマゾイに関しても太平洋側より日本海側の方が生息数も多いこともある程度察しがつくだろう。
又、複雑な地形の海岸線が多いことにプラスして南からの暖流がそのまま北上していくことで、北海道とは思えぬ暖流色の強い魚種であるブリやヒラメなどが道北圏に至るまで見られるのも日本海側の特徴だ。
室蘭、白老、苫小牧、釧路など…長らく続く砂浜の所々に造られた大型工業港を有する道内太平洋側とは相反する自然の造形美が織りなす、深い山々がそのまま海に迫るゆえに天然の岩礁地帯も多いのだ。
こういったシチュエーションだけで見てしまえば、アイナメにとってはまたとない環境と思えるが、海流が及ぼす影響も手伝い彼らにとっての適水温の範囲が太平洋側よりも限られているためか、釣れるアイナメの数は決して多いとは言えないし、型にしても太平洋側ほど巨大化しない環境にある。日本海側では北海道とは言え、このご時世において40cmのアイナメは上等。一般的に積丹半島のアイナメ磯っぱりゲームにおいて通常は42、3cmが出れば満足サイズと言われる現状から考えると、45cm以上はランカーの域に入るだろう。同じ魚であっても海が異なれば、見方の尺度も変えなければならない。
今回、初めて積丹半島のアイナメを専門的に狙いに行ったことでつくづくそう感じたし、影響を及ぼす海流やシチュエーションなど元々の生まれ育つ生息環境の相違から成長の度合いと生息密度のギャップはこの釣りをやっていくうえで実に興味深い点であると確信した。
私自身、ますますこのアイナメ釣りの奥深さに感銘を受けた次第である。
そんな積丹半島において天気にも釣果にも双方に恵まれ、シーズン初期とは思えぬ大台以上の釣果を引き出せたことは大変うれしく思っている。横方向へサイズが巨大化しながら成長していく太平洋側産のアイナメに比較し、一回り以上全長は控え目ながら日本海特有の荒い潮流にもまれ、丸みを帯びながら筋肉質に引き締まった体型へと成長していく日本海側産のアイナメの魚体もまた見事なものだ。
そういう意味では、今回幸運にも出会えた積丹半島でのゴーマルアイナメは私にとっても忘れられない貴重な1尾となった。
“積丹ブルー”と称される豊穣の海での、素晴らしき仲間達と愛すべき魚達に感謝。
タックルデータ
■ベイトタックル<テキサスリグ>
●ロッド:シューティンウェイSWC-802EXHスキップラン
●リール:レボエリートIBHS
●ライン:シーガー R18フロロハンター16lb
●シンカー:カルティバブラスシンカー1/2oz、1oz
●クッションビーズ:オーナー 夜光ビーズソフト原色4号
●フック:岩礁カウンターロック3/0、2/0
●ルアー:パワーベイト・パルスワーム4”(バークレイ)
パワーベイト・パワーホッグ4”(バークレイ)
ガルプSWダブルウェーブ3”(バークレイ)
ジャスターホッグ3.3”(カルティバ)
●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq
●偏光レンズ:TALEXアクションコパー
2012年6月22日 | カテゴリー:雑誌掲載・DVD